阪神藤浪は苦笑いの今季初勝利だ。8回2/3を8安打2失点(自責点1)。完投ペースで9回のマウンドに上るも、2死一、三塁で球数が149球に達して無念の降板となった。「正直、完投できなくて悔しいのが1番です」と反省の言葉を口にした。

 ひそかな夢がある。「もし、自分の後輩で高卒1年目に10勝するピッチャーが現れたら、あの時計を贈れたらいいなって思うんです」。1年目の13年に10勝を記録。2ケタ勝利を達成したご褒美として、新井良太から100万円級の高級時計をプレゼントされた。良太が初任給で買ったもので、今も大切に使用する宝物だ。それでもいつか手放す覚悟がある。

 「もちろん、その時は良太さんに確認させてもらいますけどね。僕が贈った時計をまた、その選手が後輩にプレゼントしてくれたらうれしい。新しい伝統になっていくというか。そうなれば良太さんも喜んでくれると思いますしね」

 「個」よりチーム全体を考えられる男。だから6連戦の初戦、救援陣を休ませるために9回続投も志願した。金本監督は「本人の気持ちを大事にしてあげたかった。(最後は)さすがに肩が心配になった」と説明。悔しさは残ったが、チームを3連勝に導いた事実は大きい。【佐井陽介】