レジェンド・ストッパーが復活を遂げた。中日岩瀬仁紀投手(41)が、巨人2回戦(ナゴヤドーム)の8回1死満塁のピンチで登板。14年8月6日以来、612日ぶりのマウンドで、通算402セーブを誇る左腕は、巨人ギャレットを二ゴロ併殺に仕留めた。中日は昨年10月に右肘手術を受けた吉見一起投手(31)も復活登板で7回無失点と好投。12回引き分けに持ち込んだ。

 その瞬間、どよめきにナゴヤドームは包まれた。0-0で迎えた8回1死満塁。最大のピンチに、コールされたのは「岩瀬」の名だった。

 岩瀬 まさか1死満塁になるとは。

 通算890試合目。さすがに本人も想定外の場面だったようだが、ここからが違う。過去、幾多の窮地を防いで402セーブを積み重ねてきた。

 岩瀬 打者に集中と開き直っていけた。マウンドに荒木が来てポジショニングを確認するときに、自分のところに打たせろという感じだった。そこに打たせられて良かった。

 仕留めたのは、やはり宝刀のスライダーだった。カウント1-1からの3球目、127キロで巨人ギャレットのタイミングを外した。狙い通りの二ゴロ併殺。両手で力強くガッツポーズをつくった。ベンチでは送り出した谷繁監督も笑顔で左の拳を振った。「やっぱりさすが。初登板で1年半ぶり。すごい仕事をしてくれた。あそこを抑えてしまうんですから」。14年8月6日広島戦(ナゴヤドーム)以来、612日ぶりに1軍マウンドで大仕事を果たした左腕に、ファンも拍手喝采だった。

 昨年は肘の違和感が拭えず、2軍戦にも1度も投げられず、シーズンを棒に振った。推定2億5000万円の年俸大幅ダウンの契約更改ものみ、ユニホームを着続けることを決めた。2軍で登板を重ねても「とにかく1軍で投げてみないと分からない。まずはそこからだから」と何度も繰り返した。復帰第1球もスライダーだった。高めに抜けたが、腕を思い切り振った。「それで感覚を取り戻せた。冷静になれた」。再スタートを切った。

 チームは首位に0・5ゲーム差。この日を含め、黒星を喫していない6試合(4勝2分け)で投手陣は、わずか5失点。そしてブルペンに心強い岩瀬が戻ってきた。「ここまで時間がかかるとは思っていなかった。何とか戻ってこられた。みんなが頑張っている。ついていきたい」。中日に欠けていたピースが埋まった。【宮崎えり子】

<岩瀬復帰までの歩み>

 ◆14年8月6日 前回の1軍登板。広島戦(ナゴヤドーム)で1/3回を1安打無失点。だが、その3日後の同9日に左肘違和感のため、出場選手登録を抹消された。

 ◆15年2月19日 北谷キャンプ中、左肘の違和感のため、名古屋に戻った。15年シーズンは結局、2軍戦を含め実戦登板はなし。

 ◆15年12月7日 契約更改を行い、推定年俸3億円から2億5000万円ダウンでサイン。「やるか、やらないか。金額は関係ない」。

 ◆16年2月1日 北谷キャンプで一番乗りでブルペン入り。捕手を座らせて70球投げた。同11日には紅白戦で1年半ぶりの実戦マウンド。「投げられるって楽しい」と笑顔。

 ◆16年2月26日 インフルエンザに感染。

 ◆16年3月13日 教育リーグ広島戦で故障後、対外試合に初登板。ただ、調整が出遅れ、プロ18年目の開幕は2軍スタートだった。