巨人が伝統の一戦で阪神と激突し、5日ぶりに首位を奪還した。3回2死二塁でFA加入の脇谷亮太内野手(34)が中前打を放ち、本塁クロスプレーは1度はアウトと判断されたが、ビデオ判定の末にセーフと覆された。セ・リーグ初のコリジョンルール適用で勢いに乗り、接戦を制した。負ければ今季初の4位転落を阻止し、連敗を3で止めて再びトップに立った。

 虎党の歓声に沸く中、高橋監督は冷静にグラウンドへ歩を進めた。「ベンチからだからハッキリしないけど(走路をふさいだと)そう見えた。走者(小林誠)が一番見えていて『ライン上にいた』と言っていたしね」。抗議をする間もなく審判団も集まった。ビデオ判定の末にセーフへ。怒り狂う金本阪神を尻目に不振の主砲ギャレットの適時打で畳み掛ける。序盤で握った主導権は試合の勝敗に直結した。指揮官は「アウトがセーフになったのはだいぶ違う。いいところでもう1点取れたのも大きい」と3回の2得点を分析した。

 今季から導入された衝突プレー。捕手小林誠の脳裏に苦い思いが“交錯”した。「僕も経験している。DeNAにやられているので」。3月31日の一戦で進路は空けたが、ロペスにタッチをかいくぐられた。意識が高いからこそ、この日のプレーには確信があった。「(原口は)ベースをまたいでいた。相手としては痛いプレーだと思う。自分は違反しないように追いタッチになっても、なるべく前に出る」と胸に刻んだ。

 セ初のコリジョン打を放った脇谷は運命の“交錯”の末にこの舞台にいた。14年にFA加入した片岡の人的補償で西武へ。2年後、自らFA宣言し、巨人へ舞い戻った。野球人生の岐路を決断した時、考えたことがある。「ヤス(片岡)と最初にご飯を食べようと。僕が出て、また戻って、いろいろ気を使う部分もあると思う。でも西武での2年間は大きな経験となり、感謝している。これからは仲間として戦う」。昨年12月、2人は語り合った。この日、最近は片岡が定位置だった「2番二塁手」で脇谷が輝いた。

 宿敵と激しくぶつかり合う甲子園で今季3勝1分けと土をつけられていない。首位に再浮上した高橋監督は「特に変わることはない。今まで通りにやれれば」と冷静を貫いた。幾多の激突を制し、覇権を奪う。【広重竜太郎】