亡き母にささげる“猛打ショー”だった。巨人坂本勇人内野手(27)が、先制の適時打を含む3安打2打点の活躍で交流戦を白星で締めくくった。1回無死一、二塁から右翼線への適時二塁打で突破口を開き、4回には中前打、2点リードの8回には適時二塁打でダメ押し。14安打5得点の快勝を演出し、チームを2位に押し上げた。

 9年前のこの日、母・輝美さんが病気で他界した。坂本にとって、母は野球人として、人間として、多大な影響を受けた存在だった。左利きにもかかわらず、右投げなのは、野球を始めた時に右投げだった兄のグラブを母に与えられたのが理由。「おかんのおかげ」と今では笑い話だが、遊撃手として、球団初の8年連続2ケタ本塁打は母に導かれたものだった。

 年末年始が訪れる度、墓前に手を合わせ、1年間の報告と新たな1年の意気込みを心の中で語る。「1軍でプレーする姿を知りませんから。今の僕を見たら、どう思うでしょうね」。空から見守る母に向け、今年の母の日も、G2の「LETTER~おかんに贈る音の手紙~」を登場曲に使った。「今日くらいはね」。明るく、朗らかな主将は周囲への気遣いから、公の場で母の話をするのは避けるが、歌で思いを示した。

 結果が答えだった。母の命日は過去4試合で打率4割4分4厘、1本塁打、6打点。命日での活躍に「良かったです」と一言。言葉は必要なかった。自らの先制打を口火に、坂本にとって、チーム内での“兄貴”的存在の長野が、“父親”的存在の阿部が連続適時打でそろい踏み。今季初のクリーンアップ連続打点で交流戦を5割で終えた。「いい形で終われて、良かった」とチームの勝利を心から喜んだ。【久保賢吾】