日本ハムがメモリアルな勝利を、劇的に飾った。ロッテ戦(札幌ドーム)で延長12回、本塁打キングを争うブランドン・レアード内野手(28)がサヨナラ本塁打で勝負を決めた。先発の大谷翔平投手(22)が降板するアクシデントもあり、7回まで5点をリードされる展開。大谷降板直後の7回に4点を返し、1点ビハインドの9回2死、ベテラン田中賢介内野手(35)の起死回生の2号ソロで望みをつないだ。大谷の負けを消すとともに、07年の球団最長タイの14連勝に到達、北海道に本拠地移転後、主催試合通算500勝を挙げた。

 球場にとどろく、悲願が集結した。5-5の延長12回。4万超えの観衆が、祈る。レアードが、一振りで終止符を打った。「入ってくれ、入ってくれ。早く帰りたいから入ってくれと願っていた」。ファンが両手を上げ、待ち構える左翼席に25号のサヨナラアーチを運んだ。今季最長5時間10分の激戦。ヘルメットを脱ぎ捨て、自慢の丸い頭を突き出し本塁生還した。

 歴史的快挙に、同時に到達した。07年以来の球団最多タイ14連勝。北海道に本拠地移転後、主催試合で500勝を達成した。盤石とみられた先発大谷が7回にアクシデント降板。今季最大5点差をつけられた。驚異の猛追は7回。岡の今季1号2ランを号砲に、1番西川からの上位打線が目覚めた。中軸陽岱鋼、中田の連続適時打で1点差に迫った。レアードは吉兆な空気を感じ取っていた。「今日のベンチはすごく、プラスの雰囲気だったんだ」。

 起死回生の一撃が、勝利への伏線だった。1点ビハインドの9回2死。田中賢は「あんまり狙わないんですけど、あそこはいっていいかなと」と覚悟を決めていた。フルカウントからの6球目。144キロの直球を右翼席に運んだ。「とにかく1点でも返せば、何かが変わる」。07年の連勝街道を経験しているベテランが、希望を紡いだ。

 新たな常勝ムードが漂っている。連勝中のロッカールームも緊迫感はなく、普段通りの空気が流れる。20代中心の若いチーム。周囲に嫌な緊張感を出さないようにと、個々でこっそり毎食麺類を食べるなど、ひそかに験担ぎする選手はいる。田中賢は「(07年は)バント、バントでという感じ。今は逆転、逆転が多い」と違いを実感する。上位を争うロッテとの対決で3連勝。指揮官は「選手たちが本当に一生懸命、やっていることは間違いない」。5・5差の首位ソフトバンク巻き返しへ、迷いなく突き進む。【田中彩友美】

 ▼日本ハムがサヨナラ勝ちで07年に並ぶ球団タイ記録の14連勝をマークした。連勝のプロ野球記録は54年南海と60年大毎の18連勝で、14連勝以上は07年日本ハム以来プロ野球16度目になる。この日は0-5から逆転。日本ハムの5点差以上の逆転勝ちは15年9月20日西武戦(0-5→9-7)以来で今季は初めて。過去に14連勝以上した15球団の中で、14連勝目以降にサヨナラ勝ちは60年大毎が15連勝目、65年南海が15連勝目、71年阪急が14連勝目に記録しているが、14連勝目以降に5点差逆転で連勝を伸ばしたケースは初めて。