新任のソフトバンク若田部健一2軍投手コーチ(47)に指導方針を聞いた。この秋季キャンプから背番号72のユニホームを着て、若手を指導している。型にはめず技術は個性を重視。経験を生かしメンタル面も強化させ、満員のヤフオクドームで堂々と投げる選手を作り出す。V奪回へ向け、2軍から次々と戦力を送り込む。

 02年以来14年ぶりのホークスのユニホームだ。秋季キャンプを訪れたファンから「おかえり~」の声が飛ぶ。若田部コーチは「うれしいですよね。ジーンときますね」と喜ぶ。05年に横浜(現DeNA)で現役を引退。その後は評論家としてホークスの野球を見続けてきた。

 「外から見るのとチームの内部に入るのでは違う。(厳しい評論をした時も)実はこういうコンディションだったからかと。中にいないと分からない部分は多い」

 今季で言えば摂津、大隣、松坂とベテラン勢も2軍で調整する時間が長かった。「彼らがフルに力を発揮できる環境を整えていきたい。いまさら投げ方を変えろ、体形を変えろとは言えない」と、笑う。彼らは経験と強いメンタルを持っているからこそ別格という。

 「自信を持つこと。満員の中で投げるのは技術よりメンタル。今の若い選手は真面目で、技術にばかり取り組む。大事だが、そればかりで考え方が狭くなっている。いろいろ相談役になりたい」

 鳴り物入りで入団し、弱小から常勝軍団へチームとともに成長した自らの経験を伝える。松本、高橋の14年、15年ドラフト1位コンビにはもちろん大きな期待を寄せる。

 「来年はA組キャンプからオープン戦まで残って、1軍のマウンドを経験してほしい。ブルペンの球は1軍で通用しそうなものを投げている」

 そのためにも、この秋は体力づくりだけでなく、フィールディングやけん制など細かい部分に磨きをかける。

 「何だこの投げ方? という選手でも、今まで結果を残した選手はたくさんいる。森だってあんな常に全力投球で3年連続50試合投げている。型にはめたくないし、はまらないでほしい」。初の指導者として、個性豊かな選手を育てる。【石橋隆雄】

 ◆若田部健一(わかたべ・けんいち)1969年(昭44)8月5日、神奈川県生まれ。鎌倉学園-駒大。ドラフトでは広島、西武、巨人と4球団競合の末、1位でダイエーに入団。99年に10勝を挙げ福岡移転後初のリーグ優勝に貢献した。03年から3年間横浜でプレーし引退。プロ14年間で通算71勝75敗、防御率4.15。184センチ、87キロ。右投げ右打ち。夫人はタレントの徳丸佳代、長女はHKT48の遥。