6月14日からの広島3連戦。結果的に、ここで喫した3連敗が、今季の西武の大きなターニングポイントになってしまった。

 最大9あった借金を完済して迎えた初戦に、コリジョンルール適用でサヨナラ負け。同点の9回裏、本塁クロスプレーでのアウト判定がリプレー検証でセーフに覆った。後味の悪い“判定負け”に、運悪く主力の故障も重なった。続く2戦目で主砲中村が左膝を負傷。3戦目前には、ブルペンの柱の牧田が右膝痛で登録抹消となった。相次ぐ離脱も響いて3タテを食らうと、ここから14カード連続勝ち越しなしの泥沼状態。借金は8週間で一気に21まで膨らみ、順位の行方は、8月上旬の時点で、ほぼ決まった。

 まさに「魔の広島」となったが、このカードは、シーズンの分岐点と同時に、今の西武が抱える課題が象徴されていたともいえる。レギュラー野手陣の攻撃力はリーグ屈指。しかし、主力を不測の事態で欠くと、その穴をなかなかカバー出来ない。山川、木村文、斉藤らの突き上げは3年連続Bクラスからの脱却へ不可欠。新たな力は、今季陥ったような負のスパイラルを食い止める起爆剤にもなり得る。

 投手陣は、より一層の奮起が求められる。先発はエース岸が楽天にFA移籍し、戦力ダウンは否めない。菊池、多和田、高橋光の3人はもちろん、今季不本意な成績に沈んだ野上、十亀の復活が待たれる。ブルペンも、フル回転した牧田、武隈、小石、増田を刺激する存在が必要となる。

 チーム内の競争なくして、戦力の底上げはない。その意味での光明はあった。筆頭は森だ。今季終盤、経験を積ませる意味で先発マスクを任され、ほぼ捕手で出場した9月は打率2割9分8厘、2本塁打をマーク。非凡な打撃と守備の両立へ、成長の跡を示した。課題の守りが強化されれば、正捕手炭谷を脅かすだけでなく、3割捕手誕生の可能性も秘めている。そして今シーズン初の盗塁王に輝いた金子侑。その快足は、攻撃オプションとして確立した。外野手に専念する来シーズンは、より大きな武器となるはずだ。

 投手では、今季36試合に救援登板し防御率1・71と、復活を印象づけた大石。そしてU23W杯で世界一に貢献し、豪ウインターリーグでも好投した本田の飛躍に期待がかかる。

 辻監督の下、雪辱を期す来季。抜群の破壊力を持つ攻撃陣にいかに厚みを持たせ、投手陣と守りを整備出来るか。近年固定出来ていない正遊撃手も含めた課題を克服できれば、「常勝西武」復活への道筋が見えてくる。【西武担当=佐竹実】