則本 昔は三振に興味がなかった。人生初めての三振も、記憶はないですね。中学生くらいに球が速くなって、そこから相手が空振りするっていう感覚に、うれしさを覚えた。

 そんな三振で、前人未到の領域を達成した。12三振のうち、直球で5個の三振を積み上げた。3回2死から坂本勇を仕留めた150キロ直球は、球場設置の弾道測定器「トラックマン」で、一般的に速いとされる2200回転を大幅に上回る2544回転を計測した。

 まさに漫画のような直球だ。試合前の練習で、キャッチボールの相手役を務める松井裕は「怖いんですよね。直球が来ると分かっていても、捕る位置がずれて、編み目でしか捕れない。あの人、切りたがるから」と証言する。サッカー漫画「キャプテン翼」で、ゴールネットを突き破るシュートを必殺技に持つ日向小次郎の「タイガーショット」がリアルでも起きた。

 ある日のキャッチボール、新調3日目という松井裕のグラブの編み目を突き破った。松井裕をフォローするミズノ社の担当者は「回転がすごいんですかね。僕も聞いたことがない」と破損を驚く。昨年は美馬のグラブの編み目を破壊した。則本は「切ることを目標にしている」と破壊作業で、直球の質を確認する。

 直球は1回の1球目で156キロを計測し、8回最後の打者・阿部への3球目も同じ球速をマーク。終盤も衰えない「タイガー」ならぬ「イーグルス・ショット」を軸に、三振ショーを披露した。自身6連勝で、チームを今季初の5連勝に導いた。「自分が投げる試合は、常に勝てるように。記録はついてくる」。則本にとって「三振は友達」だ。【栗田尚樹】

 ▼則本が12三振を奪い、4月19日西武戦から7試合連続2桁奪三振。91年野茂(近鉄)の6試合を抜いて連続2桁奪三振のプロ野球新記録をマークした。今季の則本は9試合に登板して2桁奪三振が7度目となり、早くも14、16年の自身シーズン最多回数に並んだ。シーズン2桁奪三振の回数上位は(1)90年野茂21度(2)68年江夏(阪神)91年野茂20度(4)93年野茂、11年ダルビッシュ(日本ハム)14度で、次は90年野茂のシーズン21度が目標となる。

 ▼則本の今季90奪三振を見ると、3球三振が23個、4球で三振も31個あり、60%の54個を4球以下で記録。216奪三振の昨年は3球三振が30個だけで、4球以下は42%の91個。速攻勝負が増えた結果、2桁奪三振試合の平均投球数は昨年の131球から119球に減り、疲労を残さずに2桁奪三振を続けている。