中日荒木雅博内野手(39)が「日本生命セ・パ交流戦」の楽天2回戦(ナゴヤドーム)の4回に右前打を放ち、プロ野球48人目の通算2000安打に到達した。ドラフト1位入団ながら、非力でやゆされることもあった。打撃に自信のなかった男が、卓越した守備と走塁で働き場所をつかみ、22年かけてつかんだ打の勲章。通算33本塁打は2000安打達成者で最少だが、この33本こそが偉業への道を表していた。

 タイミングがずれたが、瞬時に軽打に切り替えた。打球は右前にライナーではずんだ。荒木らしい一打だった。笑みがはじける。すぐに目に入ったのは楽天星野副会長。入団時の監督だ。大きな花束を受け取り、目に涙が浮かんだ。プロで泣いたことはない。「こんなにうれしいんだって」。22年間の苦しみが、感動となって胸を突いた。

 「俺みたいに技術のないヤツが申し訳ない。でも最近よく『お前の2000本は価値が違う』って言われる。打撃ではなく、得意なものを生かしてここまで来た。勲章だよ」

 運動能力を買われ、95年ドラフトで中日から1位指名された。だが、あまりに非力だった。打撃ケージから打球が出ず、陰口も聞こえた。絶望の中、3年目からは両打ちに挑戦。「左」で2安打したが、クビを覚悟していた。右打ち一本に戻した01年に規定打席未到達ながら3割3分8厘。初めて自信が芽生えた。

 03年オフ、就任したばかりの落合博満監督に「長所を伸ばせ。お前は打てなくても使うから」と言われた。この言葉に救われた。井端(現巨人内野守備走塁コーチ)との「アライバ・コンビ」で黄金期を支えた。33本塁打は2000安打到達者で最少だが「それくらいの選手だったから徹底して小技をやった。33本のおかげで2000本打てたんです」。守備と走塁。生きる道を突き詰めてきた。