8年ぶり4度目出場の石巻専大(宮城・南東北)が共栄大(埼玉・東京新大学)を6-1で下し、06年以来11年ぶり2度目の初戦突破を果たした。先発した右横手投げの松沢寛人(1年=糸魚川)が9回4安打9奪三振1失点で完投。今日6日の2回戦は初出場の岐阜経大(東海地区)と激突する。

 力のない飛球が二塁手のグラブに収まると、松沢は右手で小さくガッツポーズをつくり整列に加わった。歓喜に沸くダッグアウトで先輩から次々と握手を求められた強心臓ルーキーは「初回に1点とられたけど、その後は自分の投球ができた。真っすぐには自信があった」と胸を張った。初回に自己最速を1キロ更新する147キロをたたき出し、110キロ台の曲がりの大きいスライダーを織り交ぜ相手を翻弄(ほんろう)。系列の専大応援団をバックに、野球人生初の全国大会で躍動した。

 松沢にとって、1年前には想像すらできない舞台だった。高1夏に上手から横手に転向。最速は142キロまでアップしたが、高3夏の新潟大会は4回戦敗退。小学校の教員免許取得のため、大学では硬式野球を続ける予定はなかった。そんな松沢を熱心に勧誘し、リーグ戦で抜てきしたのが、同じ新潟出身の酒井健志監督(39)だった。この日、糸魚川から観戦に訪れた母美穂さん(43)は「東京ドームで投げているのが夢みたい。見ている方が緊張する」と目を白黒させた。

 見えないものを背負って戦っていた。昨年12月22日、糸魚川市内で大規模火災があった。松沢の自宅は無事だったが「同級生の親戚や世話になっていたスポーツ用品店が被害を受けていた」と故郷を思いやった。続けて「自分の活躍が伝われば、少しでも活気づくと思う」と言葉に力を込めた。

 今日6日の2回戦に勝てば、同大初の大会2勝となる。松沢は「一樹さん(エース菅野)が後ろにいてくれたから、ペース配分を考えずに投げられた。今度は自分が逆になって、最後いけるように」と2日連続の登板に意欲を見せた。日本海から太平洋に現れた1年生の剛腕が、大車輪となる。【高橋洋平】