ヤクルトのジュリーが、“世界記録男”に投げ勝った。2年目右腕の原樹理投手(23)が、9回121球を投げ抜き、4安打2失点でプロ初完投を決めた。ルーキーだった昨季は7回が最長で、球数もプロ入り最多。「ずっと完投したかったのでうれしい。最後を締める気持ち良さを感じました」と喜んだ。

 相手先発は9試合連続の2ケタ奪三振をかけた則本だったが、ひるまない。6月に入ってから西武菊池、ロッテ涌井と投げ合って連敗。「ずっとエース級のピッチャーと当たって、周りはエースだから仕方ないと思うけど、僕は同じ野球をしている人として、負けたら悔しい」と言った。

 序盤はハイペースで三振を積み上げる則本に対して、シュート、カットボール、スライダーなどの変化球を丁寧にストライクゾーンに集めた。9回にも146キロをマークし、終盤でも球威は落ちない。7回終了時に、伊藤投手コーチから「最後まで行け」と言われると「自分も投げきるつもりだった」と集中。真中監督は「相手に向かっていく気迫を感じた」と評価した。

 ケガ人が続出する苦しいチーム状況の中、6連戦の3試合目で救援陣を休ませた意味は大きい。東都大学リーグの東洋大時代は、2日連続完投も当たり前のタフネス右腕だった。4年秋に同リーグ1部に復帰させてプロ入りした母校が、今春12季ぶりに1部優勝した喜びも力に変える。則本に投げ勝った大きな1勝で、交流戦最下位を脱出した。【前田祐輔】