意地の1発だった。3回2死一、二塁、ヤクルト山田哲人内野手(24)は“ヤマ”を張った。「ツーシームが来ると信じて初球をフルスイングしました」。日本ハム・メンドーサの外角低め141キロ、狙い通りの球を逃さなかった。芯で捉え、左翼スタンドに突き刺した。11試合ぶりの8号3ランに「久しぶりにゆっくり走れたので良い時間だった」とかみしめた。

 もがいていた。試合前の打率は2割1分3厘。規定打席到達者で最下位だった。一向に上がらない数字に「多少の焦りはある」と危機感が募った。昨年まで調子が悪ければティー打撃などのルーティンで修正できた。しかし「今年は違う。直る練習をしても直らない」とフォームが固まらず、結果が出なかった。

 新たな取り組みを入れた。前カードから杉村チーフ打撃コーチに頼み、遅い球を打つ練習を始めた。「フォームを戻そうと。続ければ財産になっていく」と捉えるポイントを確認。第4打席では左翼へ大きい犠飛を放ち「これが続けばいい方向にきたと言える」と4打点で復調へのきっかけをつかみ始めた。

 「しょんぼり禁止令」だ。三木ヘッドコーチは「山田の姿をみんな見ている。だから打てなくてもしょんぼりするな」と話す。チームの顔が下を向いては士気は上がらない。主軸として、重圧に向かえというハッパだ。山田は「チャンスで山田哲人コールも大きくなる。正直プレッシャーはかかる。けど、それをはね返さないと野球選手じゃない」と理解している。前向きに挑まなければ光はない。巻き返すため、はい上がってみせる。【島根純】