絶望の淵からはい上がった男が、大仕事をやってのけた。オリックス小島脩平内野手(30)が、同点の8回、ロッテ大谷の投じた甘い真っすぐを右翼席にたたき込む決勝ソロ。6年目のプロ初アーチだった。「ビックリしました。(2死で)走者はいないし、思い切り振ってやろうと…行ったかなと思って、うれしいです!」。満面に笑みをたたえて振り返った。

 開幕直後は、どん底まで落ち込んだ。6年目で初めて開幕スタメンに名を連ね「最初で最後というくらいの気持ち」で気合を入れていた。ところが、走塁で右ふくらはぎを肉離れ。天国から地獄に突き落とされた。負傷後の約2週間は、治療を受けて自宅に帰り静養する日々…。「何もできず、もうこのまま終わってしまうのかな」と深刻に考え、ふさぎ込んだという。

 そんな中、テレビで1軍の試合を見ていると、5歳と2歳の息子2人がつぶやいた。「パパがいない…」。その言葉を刺激にして「開幕の時よりもレベルアップして帰ってやる」と気持ちを切り替え、体幹を鍛えるなど必死にリハビリに取り組んだ。そして6月半ばに1軍に復帰し、鍛錬の成果を最高の形で出した。

 福良監督も「本当によく打ってくれた。状態がいいから使ったが、本塁打までは考えてなかったよ」とたたえた。借金6で4位のチームは、最短26日に自力Vが消滅する大ピンチ。苦しい状況が続く中、孝行息子の1発で大きな白星をつかみ取った。小島は「これで終わりじゃない。チームのプラスになるような働きを継続してやりたい」とさらなる活躍を誓った。【高垣誠】

 ◆小島脩平(こじま・しゅうへい)1987年(昭62)6月5日、群馬県生まれ。桐生第一-東洋大-住友金属鹿島を経て11年ドラフト7位でオリックス入団。内野と外野を掛け持ちする器用さが特長。177センチ、78キロ。右投げ左打ち。