巨人の“野球小僧”がジンクスを打ち破った。石川慎吾外野手(24)が同点の9回1死一、三塁に代打で登場し、プロ6年目で初のサヨナラ打。21打席ぶりのヒットで、先制された試合の連敗を21で止め、3連戦3連敗も阻止した。石川は昨オフに日本ハムからトレードで加入。強打と熱心さがウリの24歳が、伝統球団ならではの競争と重圧に打ち勝ち、大仕事をやってのけた。

 頭が真っ白になった。石川は打球が中前に抜けるのを確認し、両手を大きく広げた。駆け寄る仲間に向き直ると、直立不動のポーズで到着を待った。頭から水をかけられ、もみくちゃにされた。初体験のサヨナラの儀式が心地いい。ユニホームがぬれているのも構わず、高橋監督に抱きついた。「ちょっと興奮しててあまり覚えていない。(自分は)満面の笑みだったと思います」と声を弾ませた。

 劇的な幕切れへの準備は万全だった。4回に先発山口俊が1失点。先制されれば21連敗中という負のデータが石川の頭をよぎったが、備えは怠らなかった。9回にマギーと陽岱鋼の連打で追いつき、なお1死一、三塁。打席に入る時には、頭の中で田島との対決を復習し終えていた。今季は4月14日に遊ゴロ、5月7日は本塁打。いずれも外角勝負だった。「記憶力がいいのは僕の長所。内角に来たらごめんなさいでいきました」。2球連続で来た外角スライダーを仕留めた。

 移籍1年目。巨人は注目度も高く、外野には長野や陽岱鋼らビッグネームがそろう。激しい競争を生き抜くには結果を残し続けるしか道はない。その重圧もあり、外野の定位置をつかみかけた6月上旬、快音が消えた。「このままだと過去の5年と一緒」と、1軍に定着できなかった日本ハム時代の日々がちらついた。