苦境から救ってくれたのは、少年時代から抱く思いだった。小学校時代は「大工かバキュームカーの運転手」に憧れ、プロ野球選手を意識したのは高3の春だった。「プロじゃなくても、草野球でも、ずっと野球をしていると思うんです。だって好きだから。しんどいこともあるけど好きだから頑張れる。その気持ちは忘れちゃいけない」。結果が出なくても心は折れず、野球が頭から離れることはなかった。坂本勇には足の上げ方や打席内での立ち位置など助言を求めた。二岡打撃コーチとは連日の早出特打。バットを振り続け、不振を振り払った。

 21打席ぶりの安打で連敗を止めた石川に、高橋監督は「結果を残せず苦しいというのはプロ野球選手として当然。苦しい中で久しぶりに結果が出て良かったんじゃないか」と目を細めた。前半戦は残り14試合で、借金は8。石川はヒーローインタビュー後、再びバットを手に室内にこもった。もっとうまくなりたい-。情熱あふれる新しい芽が、巨人を苦境から救っていく。【浜本卓也】

 ▼巨人は代打石川の適時打でサヨナラ勝ち。代打でサヨナラ安打を記録した巨人選手は15年6月3日オリックス戦の井端以来になる。この試合は4回に中日が先制。今季の巨人は先制した試合は23勝7敗、勝率7割6分7厘と強いが、逆に先制されると前日まで6勝31敗、勝率1割6分2厘。先制された試合は5月7日中日戦から21連敗で、この日が7勝目。首位広島は先制試合で24勝、先制された試合でも19勝しているだけに、先制を許した試合の逆転勝ちをもっと増やしていきたい。