阪神上本博紀内野手(31)がランニング本塁打を放った。7回に左翼へ飛球を放つと、広島松山が捕球しきれず、打球はフェンスに直撃。ボールが転々とする間に俊足を飛ばして生還した。最後は守備妨害での幕切れとなったが、この1発は19年ぶりの虎戦士ランニング弾だった。

 白球が漆黒の夜空をフラフラと泳ぐ。上本は左翼に打ち上げた瞬間、俊足を一気に飛ばし始めた。2点を追う7回1死、右腕中田の142キロ直球を強振。飛球は左翼から中堅方向に吹く風に乗り、左中間へ伸びた。左翼松山がフェンスに激突しながら捕球を試みたが、グラブは届かず倒れ込む。フェンス直撃のボールはコロコロと中堅方向へ。中継プレーが続くころ、背番号00は楽々ホームベースに滑り込んでいた。

 「たまたま、いいところに跳ねてくれました」

 本人は至って謙虚に振り返った。ただ、少しでも全力疾走を怠っていれば、余裕のホームインは成立していなかっただろう。今季6号は自身初、阪神選手では98年7月4日広島戦(広島)の坪井以来、19年ぶりのランニング本塁打。ただ、試合後の上本は厳しい表情を一切崩すことなく、チームバスに乗り込んだ。

 最後の最後、悔しすぎる場面があった。1点を追う9回1死一塁、マウンドには広島守護神今村。1ボール2ストライクからの6球目フォークを空振り三振した。体が回転し、捕手会沢の正面に向かい合う形となった。だが、この1球で一塁走者西岡がスタートを切っており、上本は会沢の二塁送球を妨げたとして守備妨害を取られ試合は終了。金本監督が審判に抗議する中、小兵はしばらくベンチに戻らなかった。

 4点を追う5回無死満塁では右翼線に犠飛を打ち上げ、反撃ムードを高めていた。これで3試合連続安打となり、依然二塁スタメンの座はガッチリつかんだままだ。レギュラーを張る男だから、余計に敗戦の責任を背負い込んだのだろう。胸に宿したモヤモヤは、今日2日にすぐ晴らしたい。【佐井陽介】

 ▼上本が7回自身初のランニング本塁打。ランニング本塁打を記録したのは両リーグを通じて今季初、昨年2本打った茂木(楽天)以来。阪神では98年7月4日にプロ1号を初回先頭打者で記録した坪井以来19年ぶり。