不屈の闘志を見せつけた。楽天辛島航投手(26)が6回2/3を2失点に抑え、自己最多タイの8勝目を飾った。試合途中に左足がつるハプニングに見舞われながらも、チームの2連勝に貢献した。首位ソフトバンクも勝利したため、ゲーム差は「1・5」のまま。一戦必勝で、猛追する。

 辛島は、内角高めに130キロ直球を投じ、見逃しストライクを奪った。そのすぐ後、軸足の左足を引きずった。2点リードの7回1死走者なしで、中島の打席だった。駆け寄るトレーナー、与田投手コーチに「大丈夫です」とだけ伝え、何事もなかったかのように、ロジンバッグに手をつけた。そして99球目、今度はど真ん中に直球を投げ込み、遊ゴロに抑えてみせた。

 試合途中から、左足がつりかけていた。「しっかりと、つったのはあの(中島の打席)場面です」。痛みを抱えながら、マウンドに立ち続けていた。目の前の打者を打ち取るまで、変わることは出来ない。「7回までは投げたかったです」。気合で2死走者なしまでこぎつけ、悔しさをかみしめながらマウンドを2番手の久保に譲った。6回2/3を4安打2失点に抑え、12、14年に挙げた自己最多タイの8勝目をマークした。「あんまり気にしていない」。試合後は左足を引きずりながら、報道陣の前に登場した。

 職人のごとく、言葉数が少ない。登板前日の囲み取材や試合後であってもだ。淡々と、武骨。福岡出身の九州男児は、多くを語らない。そんな男が、前回登板の1日西武戦(メットライフドーム)で屈辱を味わった。6回途中を6失点(自責5)。考え、試行錯誤を繰り返した。先輩の岸のよどみないフォームを質問した。報道陣にも「やっぱり、ランナーを出してからの1発はだめだと思う。ソロはまだいい。しっかりと試合を作りたい」と珍しく語ることがあった。

 それだけ、心の底から白星を欲していた。だからこそ、足がつろうと、気合が勝っていた。7月18日の日本ハム戦(函館)以来となる勝利。梨田監督からも「よく粘った」とねぎらいの言葉を掛けられた。首位ソフトバンクの背中は見えている。チーム一丸となって、追いかける。【栗田尚樹】