悲しみのボスにささげた。中日のアレックス・ゲレーロ内野手(30)が、両リーグ最速となる勝ち越し30号3ランで、チームを離れた森監督に白星を贈った。

 2回裏、ベンチ前で円陣が組まれた。ナインの前に指揮官が立ち思いを託した。「申し訳ないが、2回で(チームを)離れる。頑張って勝ってくれ」。森監督自ら海を渡って獲得に尽力した助っ人が、その約束を果たし、3カード連続勝ち越しを決めた。

 森監督は、7日に長女矢野麗華さんを乳がんで亡くした。35歳だった。この日は、横浜市内の通夜に間に合うギリギリまで采配を振り、森脇内野守備走塁コーチに代行で指揮を託した。指揮官が球場を離れた直後の3回、2死二、三塁でゲレーロが決勝弾。「今、森監督は難しい時期。何とか楽になれないかと、できるのはこれぐらい。自分のバットで貢献できてうれしいよ」。自身も愛娘アレキサンドラちゃん(5)を持つ父親。「監督も悔しいと思う」と沈痛な面持ちだった。

 中日で両リーグ最速で30号をマークするのは、94年大豊、96年山崎に次いで3人目。キューバ出身の大砲は「本当にうれしい」と白い歯をこぼした。死球を受けた右手首だけではなく、左手の甲もスライディングで痛めたという。手負いの状態でもチームのために奮い立つ。竜の4番は熱く、頼もしい。【宮崎えり子】