糸井よ、早く帰ってきてくれ! 右脇腹筋挫傷からの再起を期す阪神糸井嘉男外野手(36)が復活弾を放った。15日、ウエスタン・リーグ、オリックス戦(鳴尾浜)で実戦復帰。右脇腹を痛めた7月17日広島戦以来、29日ぶりの実戦でいきなりアーチをかけた。この日、金本阪神は首位広島に惨敗でカープの優勝マジック27が再点灯。もう待てない。超人の力が必要だ。

 京セラドーム大阪のため息からおよそ9時間前。太陽が照りつける鳴尾浜球場で大歓声が起こっていた。右脇腹を痛めていた糸井が2軍のオリックス戦に「2番右翼」でスタメン出場。注目の復帰戦でいきなりアーチをかけたのだ。

 超人らしい仰天の弾道だった。1-3と2点ビハインドで迎えた3回の第2打席。2死走者なしの場面で、オリックス山崎福の内角直球をフルスイング。うなりを上げた打球が完全復活が近いことを告げていた。弾丸ライナーで右中間フェンスを越える豪快ソロ。日本ハム時代の08年以来となった2軍公式戦は、5回攻撃を終えたところで交代し、3打数1安打。右翼の守備機会は1度だけだったが、ひと振りで強烈なインパクトを残した。

 1軍は苦しい状況が、さらに窮迫してきた。3連勝を期して臨んだ首位広島との3連戦初戦でいきなり痛恨の黒星を喫した。コイにマジック再点灯を許すなど、沈滞ムードに包まれるのも無理はない。そんな金本阪神に差した一筋の光。報告を受けた金本監督は「まだわからん。どうだろうね」と話したが、早ければ18日からの中日3連戦(ナゴヤドーム)から1軍に復帰する可能性もありそうだ。

 虎党の期待は大きい。この日は試合前から球場外に長蛇の列が出来上がって入場制限がかけられた。背番号7の復活を見たいという虎党の熱い思いがあるからこそ。収容人数約500人の球場に入りきらないファンが詰めかけた。

 この日、糸井本人は言葉を発することはなかったが、掛布2軍監督は言った。「普通の状態だったら当たり前。すごいとかダメとかいうレベルの選手じゃない」。1軍は糸井不在のこの1カ月、24試合を戦い、12勝11敗1分けと貯金を大きく上積みできないでいる。投手陣をみれば、メッセンジャーが負傷離脱し、先発のやりくりにも苦労するほど。打線の援護がなにより必要だけに、糸井の復帰が待たれる状況でもある。

 糸井は今日16日は患部の状態をチェックして2日連続となる2軍オリックス戦に出場する可能性がある。1軍帰還はもう、目の前。投手陣に藤浪が復帰し、打線で糸井が復活すれば…。奇跡の逆襲への思いを抱かせる弾丸アーチだった。【桝井聡】

<糸井故障後の歩み>

 ◆7月17日 広島戦5回の打席で空振りした際、右脇腹に痛みを覚え、途中交代。

 ◆同18日 右脇腹の筋挫傷と診断され、出場選手登録を抹消された。

 ◆同20日 鳴尾浜でリハビリし、シーズン終盤とみられていた復帰時期について「10日後でしょ」と笑い飛ばした。

 ◆8月2日 打撃練習を再開。痛みなどを確認する程度ながら、室内でティー打撃を50球。グラウンドでもキャッチボールやランニング。

 ◆同6日 鳴尾浜の室内練習場で故障後初のマシン打撃を行った。下半身を鍛えるメニューにも取り組んだ。

 ◆同12日 鳴尾浜の全体練習合流。掛布2軍監督のアドバイスを受けながら打撃練習。フリー打撃では35スイングで3連発含む11本の柵越え。