アクシデントにも屈しなかった。広島大瀬良大地投手(26)が左肩付近に死球を受けながら、6回途中まで2失点に抑えた。2回の1打席目に藤浪から受けた死球を言い訳にせず、粘りの投球で8勝目。マジックを26に減らした優勝とともに、自身3年ぶりの2桁勝利も見えてきた。

 異様な空気の中でも、大瀬良は落ち着き、そして時折笑っていた。2回の打席で左肩に死球を受け、グラブを引く動きにも痛みが走った。立ち上がりから毎回走者を背負う投球。さらに相手先発の阪神藤浪の荒れた投球にブーイングやざわめき、悲鳴が上がった。6回に3本の二塁打を浴びてマウンドを降りたが、5回まで無失点。粘りの投球で何とかリードを守り、3試合ぶりに白星を手にした。

 思わぬアクシデントに見舞われた。2回1死走者なしの打席で、藤浪の直球は左肩付近を直撃した。その場に座り込み、ベンチ裏に引き揚げ手当を受けた。数分後、姿を見せた大瀬良は三塁ベンチから駆けだし、福岡6大学リーグでともにプレーした阪神捕手梅野のお尻をたたき、一塁ベース上では「大丈夫、大丈夫」と笑顔で帽子を取り、気丈に振る舞った。

 強さはマウンドでも示した。1度捕手側に突き出した後、痛みが残る左腕を引き、右腕を振った。毎回走者を背負う投球が続き、球場も異様な空気に包まれた。4回に菊池が再び藤浪から左肩付近に死球を受けると、広島ファンからはブーイングが飛び、両軍がベンチから出てくるなど騒然となった。それでも5回まで無失点にしのいだ。

 6回は2死三塁から連続二塁打を浴びて2点を失った。「球数が多く、イニング途中で降板したのが悔しかったです」。中継ぎ陣に負担をかける5回2/3降板に猛省した。

 前回9日中日戦は中盤の5、6回に失点を重ね、マジックを消す今季初黒星を喫した。再点灯直後のこの日はアクシデントにも屈せずにリードを守り、優勝マジックを1つ減らし26にした。今季8勝目で、3年ぶり2桁勝利も射程圏にとらえた。アクシデントにも、痛みにも負けず、頂点へ突き進む。【前原淳】