西武がサヨナラ勝ちで5連勝を飾った。菊池雄星投手(26)が楽天打線を2安打に抑え、今季3度目の完封でハーラートップタイの12勝目。防御率、奪三振と合わせて投手3部門でトップに立った。2回に球審から2段モーションを指摘されたが、動じることなく9回を投げきり、栗山巧外野手(33)のプロ2本目のサヨナラ本塁打を呼び込んだ。2位楽天とは最接近の2・5ゲーム差。炎獅子ユニホーム最終日を劇的勝利で締めくくり、逆転優勝も夢ではなさそうだ。

 背番号「16」の矜持(きょうじ)を持って、腕を振り続けた。菊池は途中で両足がつりながらも、9回までゼロを並べた。その力投に応えた栗山の劇的アーチでサヨナラ勝ち。昨季の自己最多に並ぶ12勝目で、チームを5連勝に導いた。笑顔のお立ち台で「人生で一番鳥肌が立ちました!」と張り上げた。

 2回に2段モーションの指摘を受けても心は乱さなかった。「難しい試合でした。僕らはルールに従ってやるしかないですが、なぜ今っていうのは正直ある」と明かした。ただ、それを言い訳にはできない。相手は2位楽天。「勝てば差を縮められる。こういう試合だからこそ、絶対根負けしないように。絶対、勝ちたい気持ちが強かった」。4回1死満塁、7回無死二塁のピンチもねじ伏せ、思い切りほえた。

 追いつきたい背中がある。「カズさんのような投手になりたい。憧れです」。同じ背番号「16」を背負った左腕、石井一久。自分と同じ直球とスライダーを武器に海を渡った先輩からの言葉が、今も胸に刻まれている。

 「雄星は何でプロに入れたの?」。入団3年目。直球の球速が140キロ前後に落ち込んだ。変化球でかわす投球スタイルに変えるべきか悩んだ時のひと言だった。自分の持ち味は真っすぐ。それを磨かずして、変化球は生きない。球威を戻すために筋力トレーニングを重ね、土台を鍛え直した。「あの時、自分の原点に気付かせてもらえたから、今がある」。クイックモーションで投げ続けた92球。「(途中降板の)選択肢はなかった」という9回、原点の直球は154キロをマークした。

 石井一のシーズン最多勝利数14まで、あと2勝。今季掲げる目標は「背番号以上」と力を込める。「来週はソフトバンク戦が待っている。楽天ともまた戦う。もっともっと緊迫した展開になると思いますが、そこでこういう投球が出来れば、自信を持っていいかな、と思います」。エースへの階段を、また1段上った菊池。目指す高みはまだ先にある。【佐竹実】