広島岩本貴裕外野手(31)が、逆転の流れに乗った。1点差に迫った7回1死一、二塁。岩本は中日谷元の低め144キロ直球を思い切りたたいた。「チャンスだったので、走者をかえす意識で入った」。中堅方向へ真っすぐ伸びた打球はそのままフェンスを越えた。打球がグラウンドに跳ね返るも、正真正銘の逆転3ラン。14年6月27日DeNA戦以来、1170日ぶりの1発が試合を決めた。

 三ツ間対策として攻守の要である菊池も外し、左打者を並べた。投手岡田も含めスタメン9人のうち8人が左打ち。クライマックスシリーズ(CS)で対戦する可能性がある阪神青柳対策の意味も含まれていた。1度は逆転を許す展開も、「逆転の広島」らしく勝利した。

 岩本は昨年の優勝の瞬間は自宅でテレビ観戦していた。「うれしいけど、複雑。その中に入りたい気持ちが強かった」。クビも覚悟した昨オフ、原点回帰。長打を求め軸足に重心を残した打撃フォームを体に染みこませた。2軍で8本塁打を放ち、待望の1軍弾につなげた。

 スタメンが変わっても強い。チームは8連勝。マジックは6まで減った。緒方監督も「野手が中盤に取り返してくれた。しっかりした集中力で点を取り返したというのは評価するところ。岩本? すごいホームランだったね」と認めた。打率4割超と成長を示す殊勲者は「常に危機感を持っている」と表情を崩さない。歓喜の輪に加わるまでは、歯を食いしばり1軍にしがみつく。【前原淳】