阪神は10日、掛布雅之2軍監督(62)が、今季限りで退任すると発表した。15年オフに発足した金本監督体制の目玉として入閣。若手育成を託され、今季は中谷や大山ら若手を1軍に送り込むなど、その手腕は評価されていた。後任は未定だが、四藤慶一郎球団社長(56)は「世代交代を考えていく必要がある」と指導者の若返りを図る意向を示した。28日のウエスタン・リーグ広島戦(鳴尾浜)で最後の指揮を執る。

 ファンに掛けられた声が、掛布2軍監督の功績を物語った。この日のウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦(鳴尾浜)の試合後、自らサイン入りのカードを虎党に配布した。326枚を1枚ずつ手渡す途中に拍手が起こり「掛布よくやった! 夢をありがとう!」とねぎらいの声が飛んだ。

 今季限りでユニホームを脱ぐことになった。13年オフに就任したGM付育成&打撃コーディネーター(DC)を含めると4年にわたって阪神ナインを指導。任期満了を控え「若手が1軍で活躍してくれたりだとか、これからも何人もの選手が1軍で活躍してくれると思う。非常に充実した4年間だった」とさわやかな表情で振り返った。

 指導によって、確かな若い芽が出てきた。今季は24歳の中谷がチームトップの19本塁打を記録し、ドラフト1位の22歳大山が4番を任されるまでに成長するなど、ファームから選手を送り込んだ。この日の試合前に外野芝生で円陣を組み、自ら選手やコーチ、そしてスタッフに今季限りで退任する意向を説明した。

 2軍施設の鳴尾浜には、退任のニュースを伝え聞いたファンが詰めかけた。約500人収容の球場は、史上最速となる午前10時5分に入場規制がかかった。それでも増え続け、観戦のかなわない約300人が長蛇の列を作った。

 掛布2軍監督は「ファンの方の目の力という部分が、選手を育ててくれたとも言えると思います」と熱い声援を送った虎党に感謝。さらに「31を付けてこれだけ多くのファンの方が球場に足を運んでくれてね。その背中を見てくれたということは、31番という背番号にも感謝していますね」と語った。

 球団からは退任後「オーナー付のアドバイザー的な立場」での協力を要請されている。後任は未定だが、四藤球団社長は「端的に言うと1つの世代交代を考えていく必要がある」と指導者の若返りを示唆した。

 掛布2軍監督は、今季最終試合である今月28日広島戦(鳴尾浜)まで指揮を執る。残された12試合。ミスタータイガースが伝えるべきことは、まだ残っている。【真柴健】