掛布さんに恩返しのサヨナラ! 阪神が9回裏、代打伊藤隼太外野手(28)の右翼線適時打で2試合連続のサヨナラ勝ちを収めた。昨季1軍出場29試合にとどまり、今季も2軍で開幕を迎えた伊藤隼は、掛布2軍監督の指導を仰いだ1人。この日、退任が発表された師の恩に報いるように、劇的な一打を放った。2軍もサヨナラ勝ちで、親子そろって虎のレジェンドに劇勝をおくった。

 その目は研ぎ澄まされていた。9回2死満塁で代打伊藤隼が告げられた。ここまで14残塁とフラストレーションのたまる甲子園。その重苦しい空気を一掃した。追い込まれながらも、内角速球を独特の間合いで右翼線へはじき返した。一振りで試合を決めた男は金本監督と抱擁をかわした。

 伊藤隼 打席に入る前に死ぬほど緊張してたので、それから解放されてちょっとほっとしています。(打った後は)「終わった」という感じでした。今までに感じたことのない最高の気分でした。

 2夜連続のサヨナラゲーム。代打の切り札的存在として起用されるが、8月18日の代打安打を最後に11打席連続ノーヒットだった。首脳陣の期待に応えられず、モヤモヤする日が続いたがやっと晴らすことができた。

 どうしても打ちたい理由があった。この日、掛布2軍監督の退任が発表された。偶然にも昼間2軍戦に出場してから、ナイターに駆けつけた1日でもあった。鳴尾浜では掛布2軍監督と話す時間があった。こみ上げてくるものがあったのは言うまでもない。

 恩人的な存在だ。今年の春季キャンプは2軍スタート。危機感が日増しに募った3月のことだ。掛布2軍監督やコーチ陣らの下で間合いの取り方を見直した。投手がモーションに入ったら足を上げ、感覚でボールを呼び込みながら、バットを出す。シンプルな動きだが、これを完成させるために必死に努力した。2軍練習が終わっても、鳴尾浜の室内で振り込んだ。これを見守った1人が、掛布2軍監督だ。最高の形で恩返しすることができた。

 金本監督は「チーム力、あきらめない姿勢と守りでも走塁でも、勝ちに向かっての姿勢を強く感じている。手応えはある」とナインを褒めたたえた。今季は例年になく、大事な場面での起用が続く。これからも期待に応えるべく、教わった間合いを大事にしていく。【山川智之】

 ▼阪神の2試合連続サヨナラ勝利は、15年5月27、28日楽天戦以来2シーズンぶり。代打によるサヨナラ安打は、14年4月13日巨人戦での関本以来、3シーズンぶりとなった。