巨人が執念の粘りを見せた。2位阪神に2回までに0-5とリードされたが、3回の長野の一発を号砲に打線が猛追し、4回までに敗戦ムードを振り払って接戦に持ち込んだ。4-5の9回に左翼手福留の送球エラーで追いついたものの、延長12回で引き分け。高橋由伸監督(42)は「負けるよりははるかによく粘ったと思うけど(点を)取れる場面もあったので、なんとか取り切りたかった」と、悔しさもにじませた。

 なりふり構わず攻めた。8回無死一塁では3番坂本勇、延長12回無死一、二塁では4番阿部が、それぞれ今季初めて送りバントを決めた。巨人の3番と4番が1試合で犠打を記録したのは61年4月26日広島戦の「3番国松、4番長嶋」以来56年ぶり。「とにかく1点取ればという場面では、あって当然なのかなと思っています。打つ以外でもチームを引っ張っていってくれると思いますし、坂本勇も阿部も経験を踏んでいますのでね」。

 主軸を信頼し、半世紀ぶりに実行した采配で、貪欲に得点機を広げた。ともに得点には結びつけられなかったが、指揮官の強い思いはナインにもしっかり伝わった。坂本勇は「負けなかったことが大事だと思うし、粘ることができたので」と前を向いた。阿部も「勝つためなら何でもやる」とチームの総意を口にした。

 CS圏内再突入をかけた2位阪神、3位DeNAとの「5番勝負」は引き分けで幕開けした。4点差の逆転勝利がないチームが5点差を追いついたドロー。価値あるものにできるかは、残り16試合にかかっている。【浜本卓也】

 ▼巨人は3番坂本勇が8回、4番阿部が12回に送りバントを決めた。巨人の先発3、4番がそろって犠打を記録したのは61年4月26日広島戦以来、56年ぶり。61年は1回に4番長嶋、8回に3番国松が送りバントを成功。両犠打が得点につながり、巨人は4-2で勝ったが、今回は3、4番の犠打が白星に結び付かなかった。