日本一の道は閉ざされていない-。阪神金本知憲監督(49)が「下克上」の実現を心に誓った。広島の2連覇から一夜明けた19日、チームは甲子園で全体練習を行った。練習前に円陣を組み、指揮官が「2位死守」のゲキを飛ばした。悲願のリーグ制覇は逃したが、広島を倒してクライマックスシリーズ(CS)を突破すれば、日本シリーズに進める。「チャンスは残されている」と再出発の日に闘志をかき立てた。

 宿敵の胴上げを目の前で見せられたが、下を向いているヒマはない。広島の2連覇達成から一夜明け、猛虎は甲子園で全体練習を行った。練習前には外野の芝の上に選手、スタッフを全員集め、円陣を組んだ。金本監督が語りかけた。「優勝はなくなったが、2位を確保しよう。気持ちを切り替えて、やっていこう!」。就任以来、異例ともいえる訓示で、再スタートを切った。

 12年連続で優勝を逃したが、目標が消えたわけではない。CSファーストステージを突破し、広島へのリベンジに成功すれば、日本シリーズ進出へと道は開ける。日本一を目標に掲げることができる。金本監督は言った。「そこにチャンスが残されているわけだから。今までロッテが3位から日本一になったこともあるし、中日も2位からなっている。もちろん、そこを目指して気持ちを切り替えてやっていかないと」。過去の下克上を例に挙げ、闘志をかき立てた。

 かつて猛虎は短期決戦に弱いといわれたが、14年には巨人に4連勝し、日本シリーズに進んだ。実績はある。さらに金本監督は就任以来、夏場以降に勝てるチームを目指してきた。今季は8月を17勝9敗1分けで大きく勝ち越し、チームは地力をつけてきた。短期決戦でいかに勝負強さを発揮できるかも今後の課題になる。「理想はリーグ優勝と日本一のセットだが、今はCSも11年目か。始まった時は、意識もモチベーションも低かった。11年たって、そうじゃない時代になった。CSから勝ち抜いても、十分に価値があると思う」。85年以来、2度目の日本一へモチベーションは高い。

 円陣が解けると、福留に声をかけた。「頼んだぞ、キャプテン!」。もちろん、ナインの気持ちは切れていない。福留は打撃練習を終えた後、黙々と外野のポール間を走った。「自分たちの野球をやって、早く2位を固めないと」。きょう20日の巨人戦に勝てば、2位は有力な状況になる。まずはCSの本拠地開催を確定させ、日本一に向けた準備を進める。【田口真一郎】

 ◆過去の下克上 公式戦勝率が2位以下ながらCSを勝ち抜き日本一になったのは過去4度。導入初年度(当時の呼称はプレーオフ)の04年西武は、第2ステージで公式戦勝率1位のダイエーを3勝2敗で破り、当時の規定によりパ・リーグ優勝。セ覇者中日を倒し、日本一に輝いた。10年ロッテは公式戦3位からCSを勝ち上がり、日本シリーズでも中日を倒し日本一。「史上最大の下克上」と話題になった。阪神は14年、セ・リーグ2位ながらCSを勝ち上がり、05年以来9年ぶりの日本シリーズに進出したがソフトバンクに敗れた。