頼れる助っ人が、勝負を決めた。楽天ゼラス・ウィーラー内野手(30)が、逆転の31号2ランを放った。1点を追う6回無死一塁から初球を完璧に捉えた。負ければ、CS本拠地開催が絶望的な中、一振りで望みをつないだ。チームは2位西武に2ゲーム差。チーム一丸で、勝利をもぎ取る。

 「フォー」。走りだしたウィーラーは、味方のいる一塁側ベンチに向けて指さした。いつも以上に、小走りで一塁、二塁と駆け抜けた。三塁を回ったところで、前にいたペゲーロを追い抜きそうになった。それだけ、喜びを爆発させた。ベンチで仲間とハイタッチを交わし終えても、絶叫は終わらなかった。

 ワンスイングで、しびれる雰囲気を変えた。1点を追う6回。先頭・ペゲーロが5球粘り、6球目に四球を選んだ。次打者のウィーラーは、5回まで5安打無得点に抑え込まれた十亀の隙を見逃さなかった。初球、高めの148キロ直球を捉えた。「いい球が来たら、何でもいこうと思っていた」。ライナー性で左翼スタンドへアーチを描いた。チームトップの31本目で、試合を完全に決めた。

 守備でも、流れを作った。ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ルブタンなどの高級ブランド品を愛用し、ナイキのスニーカーをおしゃれに履きこなすファッションリーダーが、華麗に内野グラウンドを駆け回った。1点ビハインドの5回先頭で岡田の三塁線のゴロを素手でキャッチ。そのまま、一塁へスローイングした。1点リードの7回1死一塁では、三遊間への打球を素早く処理し、二塁手・藤田とのコンビで三併殺に仕留めた。「いつも通り、楽しみながら、プレーしただけだよ」とリズムを刻んだ。

 チームはこの西武2連戦に連敗すれば、3位確定だった。13年以来のCS本拠地開催に向けて、負けられなかった。梨田監督も「徳俵。今日負けたら、明日はない」と試合前に選手にハッパを掛けた。重要な試合で、陽気な助っ人が存在感を示した。その風貌から映画「トイストーリー」のキャラクターに登場するポテト・ヘッドと愛されるウィーラー。エース則本の力投を陰で支え、チームの窮地を救ってみせた。【栗田尚樹】