116キロが懸命に足を動かした。2-2の9回2死二、三塁。ロッテ井上は楽天古川から遊撃へ打球を飛ばした。「捕られた」と思ったが、阿部が捕球に手間取るのが見えた。「50メートル7秒は切るはず」と胸を張る足を飛ばし、最後は頭から突っ込んだ。サヨナラ内野安打に仲間から水が飛んだ。「ヘッドスライディングは小学生以来じゃないですか。気持ちが出ました。内野安打自体、珍しいですから」と、巨体を揺らしてニンマリした。伊東監督は「スローを見たみたい。トンネル(豚、寝る)」とジョークを飛ばした。

 形はどうあれ、れっきとしたサヨナラ打だ。プロでは初めてで、野球人生では中大3年時に放ったのが最後だという。その時はサヨナラ本塁打だっただけに、「次はホームラン、打ちたいですね。1周して、ベースにかえってきたい」と、想像を膨らませた。

 和製大砲と期待され、14年開幕戦で新人ながら4番スタメンでデビュー。だが、通算4本塁打にとどまり「何してるんだか」と自己嫌悪になったこともある。8月初めには左膝を痛め2軍落ちを味わった。「1つでも勝つのがファンへの恩返し」。次は、豪快な1発で勝つ。【古川真弥】