希代のスーパースターが日本での5年間を走り切った。今オフにポスティングシステムでメジャー挑戦の意思を固めている日本ハム大谷翔平投手(23)が9日、今季最終戦となる楽天25回戦(Koboパーク宮城)に「3番DH」で出場した。生まれ育った東北で開催された渡米前ラストゲームは、4打数無安打に終わったが、疲労の残る体でフル出場。唯一無二の「二刀流」として、最後までファンの心に響くプレーを見せた。

 自然発生した拍手は、スタンド全体に広がった。惜別を予感するファンからは「頑張れ! 頑張れ! 大谷!」のエールが届けられた。試合後のあいさつ。グラウンドに姿を見せた大谷は、大きく手を振って応えた。世界の頂点へ駆け上るための、大事な日本での5年間を終えた。故郷の東北で“卒業”した。

 打席のたびに、敵地のファンからも声援が飛んだ。当初は否定的な意見が多かった「二刀流」は、積み重ねた努力と結果で評価を変えた。この日は4打数無安打。7回1死満塁の絶好機で迎えた最終打席も、見逃し三振に倒れた。4日に完封勝利した疲労は体に残る。安打が出た時点で交代させようと思っていたという栗山監督も、「最後ホームラン打つと思ったのに。格好良く終わるべきだろ」。想定外のフル出場に苦笑いしたが、ファンの胸に刻まれる3時間9分になった。

 けがに泣かされた今季だった。大谷は「いいこと、よくないこといろいろ経験できた。すごく貴重なシーズンになった」と言った。栗山監督は春に伊勢を訪れた際、足神様がまつられる宇治神社に足を運んだ。大谷が肉離れを負った京セラドーム大阪に、復帰後初めて遠征した7月には、こっそりとポケットにしのばせた塩をグラウンドにまいて、球場関係者に怒られた。ドラフト後の入団交渉に始まり、太く、強くなった師弟の絆。指揮官は夢の実現を後押しするために全身全霊をかけ、大谷はそれに応えて野球に打ち込んできた。

 自身の夢を追い、ファンへ夢を与え続けた青年が、世界へと羽ばたくときがきた。「1日1日、うまくなるために、毎日頑張っている。勝つというチームの共通意識にプラスして、技術を高めるために頑張っていきたいです」。メジャーの歴史を、ひとりの日本人が塗り替える。目撃者になれることを、全国の野球ファンは誇りに思っている。【本間翼】