阪神はDeNAに敗れてクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ進出を逃したが、若虎が活躍して来季に希望を持たせた。第3戦も5番一塁でスタメン出場した大山悠輔内野手(22)が、4安打した第2戦に続いてマルチ安打をマーク。全3試合で安打を放ち、打率5割3分8厘、4打点で自信をつけた。大山と同学年で、今季不振が続いていた藤浪晋太郎投手(23)は5番手でリリーフ登板。2回を1安打無失点に封じ、来季完全復活への土台作りに成功した。

 ドラフト1位の大山が、来季逆襲への光を放った。この試合、チーム唯一の得点を運んできたのも、そのバットだった。4回に右前打を放って迎えた6回の3打席目。2死二塁の場面。カウント1-2と追い込まれながらも、DeNAウィーランドの内角146キロを強振。シーズン中は4打数0安打だった相手に右前適時打を浴びせた。

 「負けたんで…」

 敗軍の列に埋もれた大山は、そう言って足早にクラブハウスへと引き揚げた。雄弁に語ることはなかったが、プロ1年目のルーキーが大舞台で見せた勝負強さは鮮烈だった。雨中決戦となった15日の第2戦では、左翼スタンドにCS1号をぶっ放すなど、球界初の新人CS4安打を達成。金本監督が言う「鈍感力」があるからか、大舞台でも物おじしない。計3試合で13打数7安打、打率5割3分8厘、1本塁打、4打点と、まさに「CS男」だった。

 がむしゃらに1年目のシーズンを走り抜けた。初めてのキャンプでは実戦16打席連続無安打と苦しんだ時期もあったが、6月に1軍初昇格。7月1日ヤクルト戦ではプロ初本塁打となる3ラン放ち、9月には阪神の第101代となる4番も務めた。今季は75試合に出場して、打率2割3分7厘、38打点、7本塁打をマーク。堅実な守備に対する評価も高く、来季のショート転向プランも持ち上がる。さらなる飛躍へ。楽しみな存在だ。【桝井聡】