広島ドラフト2位の熊本工・山口翔投手(18)が、OBの“ダブル前田イズム”で飛躍を期す。熊本市内の同校で指名あいさつを受けた右腕は、実は2歳から小学5年まで広島に在住した“広島っ子”。中学まで「マエケン体操」を取り入れるなど、当時の広島エースで現ドジャースの前田健太(29)が憧れだ。同じく熊本工から広島入りした前田智徳氏(46)も伝説のOB。鯉で一時代を築いた2人の前田に学び、その名の通りプロで大きく羽ばたく。

 数年前までファンとしてかぶっていた赤い帽子をスカウトにかぶらせてもらうと、山口は少年のような笑顔を見せた。2歳から小学5年まで過ごした広島で、カープと野球に染まった。小学6年で引っ越した熊本でもその思いは変わらなかった。「小さい頃から応援していた球団なので、まさか自分が入るとは思っていなかった」とドラフト2位指名という形で結実。驚きながらも「以前、広島に住んでいたとき前田健太投手を目指してやってきた。前田健太投手に少しでも近づける、大投手になりたい」と大きな目標を掲げた。

 父の勧めで野球を始めた小学2年のときから「マエケン」がヒーローだった。細身の体から力強い真っすぐと切れのあるスライダーを投げ込み、屈強な打者たちをねじ伏せる。テレビやスタンドから見ながら心酔し、それが原点となった。

 中学まで肩甲骨のストレッチ運動である「マエケン体操」を取り入れ、熊本工に進学しても日々の入念なストレッチも怠らない。小さいときに水泳を習っていたことも本家と重なる。最速152キロの直球、スライダー、カーブ、スプリットと球種も似ている。田村スカウトは「タイプ的には入ってきたときのマエケンに似ている。細くてしなやか。ムチみたいに使える。伸びしろは大きい」と認める。エースとしてチームをけん引した右腕のような成長が期待される。

 もう1人の前田の背中も追う。同じ熊本工から広島入りした前田智徳氏は、熊本工でも伝説の1人。「憧れであり、偉大な先輩。ポジションは違いますが、負けないように頑張っていきたい。まずは全力であいさつに行きます」。2人の前田がプレーしたマツダスタジアムが仕事場となる。小学生のときにプレーしたこともあるが「子どもたちに夢を与えられる投手になりたい」と自覚が芽生える。山口は早くも広島色に染まっている。【前原淳】

<山口翔(やまぐち・しょう)アラカルト>

 ◆生まれ 1999年(平11)4月28日。

 ◆球歴 小学4時に高陽スカイバンズで野球を始め、小学6年生のときに熊本へ引っ越し。日吉中をへて、熊本工へ進学。1年秋からベンチ入り。2年夏の県準々決勝の秀岳館戦ではサヨナラ死球を許して敗戦。3年春に甲子園出場。夏は県3回戦の菊池戦で敗れた。

 ◆足と肩 50メートル走6秒6。遠投100メートル。

 ◆サイズ・タイプ 181センチ、75キロ。右投げ右打ち。

 ◆趣味 バラエティー番組。特に好きな番組は「とんねるずのみなさんのおかげでした」。食わず嫌い王は「出たいより見たい」。

 ◆好きなタレント 波瑠、川口春奈。

 ◆好きな食べ物 カレーライス。

 ◆嫌いな食べ物 きのこ

 ◆好きな言葉 大きく羽ばたけ(名前の由来)。

 ◆好きな漫画 「NARUTO」。

 ◆憧れ ドジャース前田健太投手。

 ◆家族 父、母、妹。