もう1度、作り直す。広島岡田明丈投手(24)が“リセット”を誓った。3日、マツダスタジアム室内練習場で行われた秋季練習で、他の投手とともに走り込み、下半身をいじめ抜いた。今季は自身初の2桁勝利となる12勝をマークも、重要な後半に失速。自分を見失った。このオフは「戻れる場所」をつくるために、練習すべてにおいて意識を変える。

 汗びっしょりのまま、岡田がマツダスタジアム室内練習場から出てきた。キャッチボールやノックの後、下半身強化のメニューをこなした。長距離から縮めていき、シャトルランのように往復。最後は倒れ込むようにゴールした。流れ落ちる大粒の汗は決意の表れ。「課題がたくさん出た1年。毎試合が悔しかった」と袖で顔をぬぐった。

 2年目の今季は開幕ローテに入るなど躍進。4月15日の阪神戦(甲子園)では1失点でプロ初完投を飾った。球数が150球に迫っても球速150キロをマークする試合もあり、抜群の能力を発揮した。しかし好不調の波が大きく、四球で崩れる悪癖が顔を出した。投げてみないと分からない投球が続き、夏場以降は不調。首脳陣の信頼も失った。1年目の昨季、先発したCSでも出番はなかった。

 シーズン終盤には2軍落ち。ミニキャンプを張っても、本来の投球は戻らなかった。ただ腕を振る、ただ走る。多くを考えずに投げてきたことへの後悔だろう。「戻れる場所がなかった」と独特の言い回しで振り返る。冷静になった今は「体は大丈夫なのに、自分が気付かないところで、心と体が一致していなかった」と感じている。

 秋季練習、秋季キャンプでは「戻れるところを見つけたい」と言う。フォーム固めはもちろん、トレーニング、ランニングでも意識を変える。「(入団してから)やることが減ることはないので、全部リセットはしないですけど。もう1回。いろんなところで基礎となることをつくりたい」。天然キャラで愛される男は、この秋で変わろうとしている。「(12勝したけど)自分の力で勝った試合は1試合もない」。意識が変われば、結果は変わる。りりしい表情で、真っすぐ前を見つめた。【池本泰尚】