フルスイング侍が稲葉ジャパンの4番を担う。西武山川穂高内野手(25)は4年目の今季大ブレーク。7月下旬からレギュラーに定着し、出場78試合で、いずれもキャリアハイの23本塁打、61打点を挙げた。シーズン終盤からは強打者がそろうチームで4番に座り、4年ぶりのAクラス入りに貢献。日の丸を背負ってもぶれない信念で、勝利に導く放物線を描く。

 バックスクリーンを標的に定め、全球で本塁打を狙う。それが山川のスタイルだ。「ホームランバッターは、打席でも打撃練習でも、常に一番の打撃を思い描くんです」。中堅手が足を止めて見送るしかできない、大きな弧を描く打球。その理想を追い求め、フルスイングする。

 きっかけは沖縄・中部商時代だった。ある日のロングティー。思いつきで「全身を使って、バーンと振ったら、打球がめっちゃ飛んだんです。あ、これかって」。それまでも「フォロースルーがピタっと止まっていた」というフォームで本塁打を打っていた。想像を超えた飛距離が、自分でも気付いていなかった本能を呼び覚まし、ホームラン打者への道の原点となった。

 今季の活躍で、ヘルメットがずれるほどのスイングが代名詞にもなった。しかし、今年放った23発は全てがフルスイングの結果ではない。「僕がフルスイングするのは基本的に変化球。自分の間合いで打てなかった時、フルスイングを使うんです」。

 常にオーバーフェンスを狙うからこその考え方だ。基本は真っすぐ待ち。早めにタイミングを取り、バットを後方に引いて左足と右手の距離をしっかりと作る。この下地があれば「スーっと直球がきた時は、準備が出来ているので、パチンと振ればいいんです。でも自分の間合いを崩されることがほとんど。あ、変化球だ、と思った時に、反応でガバァ~と振るんです」。 フルスイングをやめようと思ったことはないという。「ブレたりしたら、やせないといけないですもんね」と笑うが、その裏には強い覚悟がある。体重100キロ。「この体で勝負すると決めてプロの世界に入った。ヒットでいいとなったら多分、僕は(他の選手に)負ける。だから常に1番を取れるところを目指す。そのための自分のやり方が、フルスイング。ホームランを打つしかないんです」。侍ジャパンでも、この決意が変わることはない。全球バックスクリーン狙いで、アジアのライバルを蹴散らしてみせる。【佐竹実】