阪神石崎剛投手(27)が、侍ジャパンを踏み台にして虎の「勝利の方程式」入りを目指す。「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」(16~19日、東京ドーム)に向けた宮崎合宿最終日の13日、代表デビューとなった石崎は西武との練習試合(宮崎市清武)に5番手で登板。最速152キロを連発し、7回1イニングを1安打無失点に封じた。稲葉監督は中日又吉とともにセットアッパー役を任せることを明言。来季阪神で「勝利の方程式」入りを狙う右腕は、代表での経験を飛躍に結びつけるつもりだ。

 侍ジャパンでの初球だった。ネット裏の野球少年たちが電光掲示版の数字に声を上げた。投げたのは石崎だ。「おい、152!」「はやっ!」。それまで登板した投手より1段速い球速に、観客の視線は自然とセンター後方を向くようになった。

 「直球の感覚はよかった。ストライク先行できたのはよかったです」

 石崎は先頭の木村文に左前打されたが、戸川を三邪飛、斉藤を三ゴロ、駒月を二飛。若手中心の西武の打者を力で押し込んだ。17球のうち直球が12球。9球が150キロを超えた。

 宮崎合宿初日から注目されていた。ブルペン投球を見た侍ジャパン稲葉監督は驚いたような表情をした。その時点でセットアッパー構想はほぼ固まっていたが、この日の登板でダメ押しだ。稲葉監督は「石崎選手は強いパワーボールを投げる。又吉選手はキレ。同じサイドでもタイプが違う」と球威を評価した。

 同監督は7回を石崎、8回を又吉とダブルセットアッパーで抑えの山崎につなぐ形が基本形と明言した。「7回の男」といえば05年優勝時にフル回転した藤川。相手の勢いを止め、一気に試合終了までの流れを持っていく。同じ役割を石崎は求められている。

 稲葉監督は「6回くらいの苦しい場面で行ってもらうことも当然ある」とも言った。建山投手コーチも「打者の右、左に関係なくパワーボールを投げられる」と使い勝手を評価。打順によってはイニングをまたがせる可能性も示した。

 大会は石崎にとって、来季のポジションアップに向けた“試験”の場になる。3年目の今季は8月に昇格すると、26試合で1勝1敗、防御率1・17とブレークした。シーズン終盤はリードした場面の中継ぎ登板もあった。ただ、それで満足できるわけもなく、究極の目標は「勝利の方程式」入り。侍で腕を磨くことが、桑原、マテオ、ドリスの一角崩しにもつながっていく。

 宮崎合宿では課題のツーシームにも手応えをつかんだ。「こういうポジションで投げられるのはうれしい。恥じないプレーをしたい」と石崎。阪神からただ1人選出の侍は、国際試合をステップに間違いなく大きくなって阪神に帰ってくる。【柏原誠】

 ◆石崎剛(いしざき・つよし)1990年(平2)9月9日、茨城県生まれ。三和から新日鉄住金鹿島を経て14年ドラフト2位で阪神入団。15年3月29日の中日戦で初登板。今季は10月10日の中日戦でプロ初勝利を挙げるなど26試合に登板し、1勝1敗、防御率1・17。183センチ、89キロ。右投げ右打ち。

 ◆今季の阪神救援投手 勝ちパターンの継投は7、8回を最優秀中継ぎ投手のタイトルを分け合った桑原とマテオがつなぎ、9回はセーブ王のドリスが抑える「勝利の方程式」を確立。3人を軸に、高橋、岩崎の左腕コンビも60試合以上登板し要所を締めた。ベテラン藤川もビハインドの展開を含め52試合に登板しカバー。石崎は2軍スタートだったが、8月初旬に昇格して26試合に登板。防御率1・17と安定した投球を見せ、10月10日の中日戦でプロ初勝利を挙げた。