キャプテンが新社長とタッグ!! 阪神福留孝介外野手(40)が11日、西宮市内の球団事務所で契約交渉に臨み、1000万円減の推定年俸2億2000万円でサインした。12月1日に就任したばかりの揚塩健治球団社長(57)が同席する異例の展開。来季もキャプテンを継続するが「社長にダメ出しOK」のお墨付きも与えられた。戦う現場とフロントが一体化し、来季は悲願の日本一を目指す。

 契約交渉の席に揚塩球団社長の姿があった。キャプテン2年目に入った福留と膝を突き合わせる。12月に就任したばかりの球団社長は、ナインを束ねるベテランと40分近く話した。

 同席が異例なら、席上の発言も異例だった。「私から発信することが現場としてそぐわなければ、キャプテンとして『違うんじゃないですか』と言ってください」。社長自ら、異論をいとわないと胸襟を開いた。「ダメ出し」をOKしたのには理由があった。

 揚塩社長 フロント、チームが一体となって優勝、日本一へ一緒に頑張りましょう。(社長にもの申すのも)キャプテンとしての責任と権限があるんです。

 福留はあくまでも自然体だ。こう返答したという。「全部、自分が引っ張るわけじゃないです。ベテランの人と一緒にチーム全体を引っ張ろうと思います」。昨オフ、鳥谷からバトンを託される形でキャプテンを引き受けた。今年11月には、金本監督から続投を伝えられた。この日も福留は「(目標は)優勝です。それしかない。鳥谷、能見、上の選手が口に出してくれている」と力を込めた。

 ベテランが率先して、若手にあるべき姿を示していく。その方針は揚塩社長の思いと重なる。「チームを引っ張る手法は、こちらの期待している形でした」。スタンスは一致していた。

 福留 社長に、どんどん言ってくださいと言葉を頂きました。阪神という組織の中で、全体で優勝、日本一という大きな目標に向かってやっていけたらいい。

 今季は93試合、4番に座り、打率2割6分3厘、18本塁打だった。クライマックスシリーズでは公式戦3位のDeNAに敗退。それだけに口調は熱を帯びる。

 福留 最後、勝てなかった。レギュラーシーズンもそうですけど、クライマックスに行って勝ちきれなかったことが悔しい。1つのボール、1つの勝ちに対して、そういう執念が、まだまだ足りないのかな。

 チームを前進させるため。新社長お墨付きのキャプテンシーを発揮し、果敢に頂点を狙う。【酒井俊作】

 

<過去の意外な球界契約更改交渉>

 ◆タコ漁師になります 92年のオリックス佐藤和弘は、起用法の不満から引退を決意。一時は兵庫・明石市で底引き網のタコ漁師となる決心を固めた。その後わびを入れ、200万円減の1000万円で更改。

 ◆大声料 オリックス下山真二は05年、ベンチでヤジを飛ばし過ぎ、喉のポリープを手術。ムードメーカーぶりが評価され300万円増の1880万円を勝ち取った。

 ◆犬手当 03年阪神Vの立役者となった下柳剛は、2年総額3億円の好条件に加え、愛犬「ラガー」君の面倒を見るという提示に納得。FA宣言した上で残留した。

 ◆エコ査定 阪神の関本賢太郎は08年7月25日中日戦で、甲子園のお立ち台から「ゴミは持ち帰ってください!」。これにより試合後のゴミは激減。異例の貢献が認められ3500万円増の8500万円でサインした。

<阪神の主な主将>

 プロ野球創成期にコーチはほとんどおらず、主将が監督の補佐役だった。初代主将の松木謙治郎は、37年春に首位打者と本塁打王の2冠。39年は助監督も兼ねた。元祖ミスタータイガース藤村富美男、後の日本一監督吉田義男も主将を経験。近年では06年に赤星が務め、12年には投手で藤川、野手で鳥谷の2人が就任している。