ヤクルトに“神ってる”候補生が誕生した。広岡大志内野手(20)が巨人2回戦で、2本の適時打を含む5打数5安打2打点と大暴れした。試合前まで20打席連続無安打だったが、神懸かった打撃で2連勝に貢献した。広岡は宮本ヘッドコーチをはじめ首脳陣イチ押しの遊撃手で、オープン戦から全試合に出場。3年目に出場機会を増やして翌4年目の“神ってる”活躍へつなげた広島鈴木のように、3年目の今年を飛躍への足がかりにする。

 打った広岡本人が、一番驚いていた。7回2死一塁の第4打席。巨人篠原の直球を詰まりながらも中前に落とし、この日5度目の「H」ランプをともした。「すごくびっくりしました。自分でも信じられない」。両軍合わせて32安打23得点の乱打戦の中、5打数5安打2打点。冷静な小川監督ですら「5の5は打てないですよ。どんな打者でも」と声のトーンを上げた。

 ヤクルトの未来を担う主力にと期待される。潜在能力は、春季キャンプで宮本ヘッドコーチが侍ジャパン稲葉監督に“未来の候補”と推薦し、石井琢打撃コーチも「リーチが長いし長打が打てる。うらやましいよ」と評するほど高い。

 そんな勝負の3年目の開幕を前に、目指すべき“姿”を実感する機会に恵まれた。広島とのオープン戦。宮本ヘッドコーチに導かれ鈴木と話す機会を得た。「この体を目指せ」とうながされ、鈴木の体に触れた。

 身長はほぼ同じ(183センチ)ながら、体重は15キロも多い強打者の、181センチ、96キロ重厚感ある肉体に、積み重ねてきた努力の跡を感じ取った。鈴木は3年目で97試合に出場し、翌年の“神ってる”活躍につなげている。「いい選手はチャンスをつかむのが早い。鈴木誠也さん、哲人(山田)さんも3年目。今年は勝負の年やから頑張らないと」。今やるべきこと、進むべき道が、はっきり見えた。

 だからこそ“ミス”を引きずらずに自分を貫いた。2回無死満塁の守備で後方への飛球を捕球後、三走ゲレーロの本塁タッチアップを許した。「反省です」と猛省したが、やるべきことは見失わなかった。5回無死一塁では高木の直球をしばきあげ、「少しつまりましたが振り切ることができた」と左中間への適時二塁打。6回1死一、三塁では高木の緩いカーブを引きつけて振り抜いた。「勇気を持って、力強く振る」を実践した結果が、神懸かり的な5安打だった。

 初のお立ち台後、バットを手にベンチ裏へ消えた。浮かれず、スイングを繰り返した。精進を積み重ねた先にだけ、ブレークの時が待っている。【浜本卓也】