苦しみながらも初めてのウイニングボールをつかんだ。DeNAのドラフト1位、東克樹投手(22)が先発2戦目でプロ初勝利を手にした。制球が定まらず、1回に3点を失うもフォームを修正しリカバー。追加点を許さず5回1/3を6安打3失点にまとめた。同2位の神里和毅外野手(24)もプロ1号を先頭打者弾で決めて援護。若き力を前面に、巨人に3タテを食らわしての5連勝を飾った。

 思い切り左こぶしを握って、ほえた。2点リードの5回2死一、三塁。東が全力で投げ込んだ147キロ直球は、外角いっぱいに構えられたミットに吸い込まれた。岡本をこん身の1球で見逃し三振。「今日一番、指にかかったボール。あそこで点を取られたら流れが相手にいく。絶対抑えようと思った」と力を込めた。

 必死に立て直した。いきなり5点の援護をもらったものの、立ち上がりは先頭から連続四球。制球が定まらず、マギーに3ランを献上した。「立ち上がりは体が浮ついて、スムーズな体重移動が出来なかった」。投球時に体が開く悪癖が出ていることに自ら気付き、修正。「フォームを少しコンパクトした。調子がいい時ばかりじゃない。悪いときにいかに抑えるかを心掛けている」と、見事なリカバリーで2回以降はホームを踏ませなかった。

 ほろ苦い経験が支えになった。デビュー戦にいい思い出はない。高校は0回2/3を7失点。大学は1年春の優勝決定戦でアウトを1つも取れずに降板。それでも壁を乗り越え、プロの舞台にたどり着いた。たとえ1歩目をつまずいても起き上がり、同じ轍(てつ)を踏まなければいい。そうやって戦ってきた。プロ初登板の5日阪神戦は、7回6安打1失点も打線の援護なく黒星デビュー。「まったく力まずに投げられた。たぶん、しっかり準備してやってきたからだと思う」。自信を持って臨めていたからこそ、この一戦に向けて気持ちを切り替えられた。

 登板後は「『ありがとうございます』しかないです。自分の力で勝った試合じゃない。今日の投球は0点くらい。野手の皆さん、リリーフ陣の皆さんのおかげです」と頭を下げた。不完全燃焼の98球でも、チームの力で勝利をつかんだ。「これがプロで勝つことなんだと実感しました。1勝だけで終わらず、1年間ローテを守っていきたい」。ウイニングボールは両親に贈るという左腕。「次は自分らしい投球をしたい」と誓った。持ち味は「思い切り腕を振ること」。悔しさの残る白星を糧に、全力で前に進む。【佐竹実】