これがセ界の小林だ。8回無死。巨人小林誠司捕手(28)が中日三ツ間の136キロ直球をはじき返した。小雨を切り裂く鋭いライナーは二塁手の頭上を越えるクリーンヒット。これで規定打席に到達し打率は3割7分5厘に上昇。「たまたまです」と謙遜したが、ともした2度の「H」のランプが紛れもない首位打者の証明となった。

 結果に飢えていた。2年連続で規定打席到達者で打率最下位。昨年のWBCではブレークし「世界の小林」と呼ばれるも、シーズンで急降下。オフにはレギュラー争いが必至と言われ、「そりゃあ、悔しいですよ。でもそう言われることは、自分はまだそれだけの選手。結果を残すしかない」と受け止めた。2月の宮崎春季キャンプ。誰よりも遅くまでバットを振り、周囲を見返す下地を作った。練習ではバットを置いた。テニスボールをラケットで打つ練習法を導入。面で打つ感覚を体に染みこませた。吉村打撃総合コーチは「遊び感覚で、打たなければという重圧を取り除きながら」と説明。柔軟に打てる方法を模索した。

 この日はプロ初の7番に打順が昇格。2回には逆転の3連打の口火を切り、先発山口俊も好リードした。攻守で貢献し、今季初の4連勝で最下位を脱出させた。首位打者の感想を問われ、「いずれ下がる時が来る。そういう時に今の状態を忘れずに日々頑張っていきたい」と気は緩めない。打って良し、守って良し。頂点へ“セ界一”の小林が巨人にいる。【島根純】