日本ハム高梨裕稔投手(26)が今季初勝利を完投で飾り、前回登板の悪夢を完全に拭い去った。テンポよく、キレと伸びのある直球を軸に「最後まで気を抜かずに投げられた」。1点差とされた8回2死三塁のピンチでは、マウンドに訪れた吉井投手コーチに闘争心をむき出しにして「初球、インコース真っすぐでいきたいです」と宣言。強打者の吉田正に対して真っ向勝負を挑んだ。やや力んで初球から3球連続でボールとなりながら、最後はカーブで中飛に仕留めた。

 1週間前の悲劇のヒーローが、不屈の闘志で勝ちをつかんだ。18日の西武戦は勝利投手の権利を持って7回無失点で降板。8点リードの展開で、残りの2回をブルペンに託した。しかし、まさかの逆転負け。「そういう時もある。次に向けて、すぐ切り替えた。いつも中継ぎの方には助けられている。あの展開なら最後まで投げないといけなかった」。反省は7回で121球を要した自分に求め、前回から30球少ない91球で最後まで投げきった。「90球台で完投したことはない。奇跡です」と、自分でも驚く省エネ投球だった。

 栗山監督は前回登板後、高梨に「なっしー、ごめんな」と謝っていた。「今日、勝たせられるかはチームにとっても大事だった」と、意味のある1勝でチームは今季2度目の3連勝。これで先発ローテ5人全員に白星が付き、貯金も今季最多の3で2位に浮上した。2カード連続勝ち越しと、屈辱をバネにした日本ハムに勢いが戻ってきた。【木下大輔】