阪神の秋山拓巳投手(27)がエンゼルス大谷もびっくりの「二刀流」の大活躍を見せた。投げては被安打5で三塁を踏ませず、8年ぶりの完封で2試合連続の完投勝利。打ってはソロ本塁打を含む2安打2打点。愛媛・西条高時代に「伊予ゴジラ」の異名を取った怪力男がチームを3連勝に導いた。
秋山は心を込めて言った。8回を投げ終えてベンチに戻ると、金本監督、香田投手コーチが歩み寄って来た。113球を投げていた。攻撃で打順も回ってくる。さらに9回の巨人打線は上位からだ。「選ばせてくれたので。即答はしなかったですけど、僕から行かせてくださいと言いました」。金本監督はにっこり笑って「じゃあ、行ってこい」と送り出してくれた。
風も秋山に吹いていた。9回は1死からゲレーロにフェンス直撃打を浴びたが、守備陣が連係プレーで三塁タッチアウト。「いい守りに助けられて、絶対に完封してやろうと」と最後の力を振り絞った。序盤から飛ばして5回まで1安打。7回1死一、二塁も長野を三併殺に仕留めてしのいだ。大量援護を受けての1人旅。5安打9奪三振の完封劇に「まんべんなくよかった」。カーブもフォークも効果的に決まった。
打っても視線を独占。1点を先取した直後の2回1死満塁では外角の直球を左前適時打。4回2死から外角直球を左翼ポール際に運ぶ今季1号。82年山本和行以来36年ぶりの完封&本塁打だ。「適時打は楽になりました。本塁打はおまけです」。3、4打席目は投球専念の三振もスタンドからは「ホームラン、秋山」のコールが起きていた。
愛媛・西条高時代に“伊予ゴジラ”と呼ばれ、通算48本塁打。ドラフト前には打者としてリストアップした球団も複数あった。阪神は投手1本だった。ただプロ入り2年目からは低迷。14年には当時の中村GMが視察に訪れた2軍戦で本塁打。うわさがうわさを呼び、周囲の野手転向の声は大きくなった。だが「投手として結果を残したい」と、本人の意思は固かった。
前回DeNA戦は9回1死まで無失点も、完封を逃した。再挑戦で成功。お立ち台では「8年ぶりっていうのは本当に恥ずかしいことなんですけど」と頭をかいた。金本監督は「7回、8回を投げてくれたらいいな、と思っていたんですけど、まさか9回投げてくれると思ってなかった。6連戦の頭で助かりました」と最敬礼。秋山は「2回いいことがあった。気を引き締めて後悔しないように準備したい」と、早くも次戦を見つめた。【池本泰尚】
▼秋山の完封勝ちは10年9月12日ヤクルト戦以来、8年ぶり2度目。8年ぶり以上の完封ブランクは、07年のあと16年に記録した黒田(広島=9年ぶり)以来で、球団では37年春のあと48年に記録した藤村富以来2人目。
▼4回に本塁打を放った秋山が、今季初の完封勝利。完封勝利した試合で本塁打を打ったのは、09年9月9日ヤクルト戦のルイス(広島)以来で、阪神では82年4月29日巨人戦の山本和以来36年ぶり。秋山は2年連続の1発だが、2年連続で本塁打を放った阪神投手は07~08年ボーグルソン以来で、日本人では80~83年山本和以来。