もう過ちはない。巨人沢村拓一投手(30)が好救援で貯金1をもたらした。1点リードの6回無死一、二塁のピンチに2番手で登板。無失点で切り抜けると、7回無死一、二塁では、けん制で二塁走者の阪神大山を仕留めた。サイン見逃しの過去を払拭(ふっしょく)し、2イニングを0封。勝利に貢献した。6日DeNA戦は12失点、8日阪神戦は9失点と“投壊”が続いた巨人は沢村-マシソン-カミネロの好投で逃げ切り、連敗を2で止めた。

 体をくるっと反転させてストライク送球で仕留めた。2点リードの7回無死一、二塁。沢村は落ち着いて捕手小林のサインを確認した。打席には犠打が想定される代打山崎。いざ勝負! と思わせた瞬間、タイミングを計った二塁へけん制球で、二塁走者大山を刺した。相手の反撃ムードを「サインが出ればやる」と冷静沈着なワンプレーで火消し。1死一塁としてからは後続を難なく打ち取り無失点のまま役目を終えた。

苦い思い出を糧にした。12年日本シリーズ第2戦。けん制のサインを見落とし、満員の観衆の前で捕手阿部にポカリとやられた。あれから6年。「投内連係やサインプレーは徹底してきた。いつ、いかなる時でもできるように」と練習を積み重ねた。試合後は「サインミスはもうしませんって書いておいてください」と自ら笑いを誘った。

 ヒーローを支える役割にやりがいを見いだしている。少年時代は高橋監督に憧れ、野球道具は高橋モデルを愛用した。打撃フォームが掲載された雑誌をすり切れるほど読み込んだ。「野球はやっぱり野手。毎日出て活躍する。中継ぎはヒーローになれない」。だから、脇役に徹して主役を支える存在になると強く意識する。どんな場面でも、マウンドに上がれば0に抑える覚悟がある。

 今季13試合目のリリーフで回またぎはチーム最多の5度。6回無死一、二塁から6つのアウトを重ね、勝利をたぐり寄せた。沢村がつなぐ、勝利の方程式。大歓声を浴びたお立ち台で打のヒーロー亀井へ、マイクもつないだ。【島根純】