巨人阿部が最高の場面で刀を抜いた。6回2死満塁。今季初対戦の武藤に中日時代の記憶を引っ張り出し、現イメージと重ね合わせた。「中日時代より球が速くなっている。フォークがあるので落ちる球をマークしながらすべての球に対応する」。カウント3-1から3球連続で直球をファウル。フォークを引き出し、真ん中へ甘く入ったところに一、二塁間を破った。勝利を呼び込む2点適時打となった。

 「智之(菅野)もいつも完璧じゃない。こういう時もあると思い、いいプレゼントができた」。エースの投球数がかさみ、試合の流れを読み、準備を早めた。「いつもより早く、3回に(坂本)勇人が打った後から始めた」。万全の準備があるから最高の場面で仕事ができる。代打起用15回のうち、5回を満塁で迎えている。3打数2安打2四球6打点。“成功率80%”を誇る。武藤との最後の対戦は12年8月。その時も満塁で走者一掃の適時二塁打を放ち、6年ぶりのリマッチで結果をだぶらせた。

 今季代打で8打点となり、リーグトップに再び君臨する。今月は先発機会も増え、4試合で2本塁打4打点。「使ってもらえるところで精いっぱいやります」。代打でも先発でも2本の刀をさやに収め、備えている。【広重竜太郎】