中日松坂大輔投手(37)の打撃へのこだわりは半端じゃない。

 20日の阪神戦で、中日移籍後初安打を放ったかと思えば続けざまに2安打目。ともに快打だった。プロ20年目で初のマルチ安打。ようやく得意の打撃で結果を出し、喜んだ。手にしていたバットのグリップエンドには「G6」と刻印されていた。

 昨年、深刻な右肩痛で引退まで考えていた男は、シーズン当初からまったく別のことで悩んでいた。「ヒットが打てないんです…」。ひまがあればバットを握って打撃練習。球団関係者や各用具メーカーにも悩みを打ち明け「とにかくヒットを打てるバットがほしい」とお願いしている。復活の1勝目は4月30日(DeNA戦)だったが、0勝よりも「0安打」の事実が、腹に据えかねていた。

 知る限りのつてを使ってバットを収集。エンゼルス大谷にはじまり、ソフトバンク中村晃、川島、阪神福留、そしてマリナーズ・イチロー。この日のプロ初安打は巨人坂本勇から先日譲り受けたものを初めて使った。「振りやすかった」そうだ。感触のいいモデルを元に微調整してメーカーに発注もしている。ここまでする投手はセ界広しと言えども、いないだろう。バットだけでなく手袋、レガースや肘当てなどにもこだわっている。

 横浜高校でエース&4番打者として甲子園を春夏連覇。松坂の打撃センスはよく知られているが、中日入り後は投球以上に打撃に関して驚かされることが多い。DH制のないセ・リーグ。「バット」が眠っていた松坂のプレーヤーとしての奥底を刺激して、復活の一助になっていると感じる。【柏原誠】