重苦しい雰囲気の漂う投手戦。流れを一変させたのは阪神植田の巧みな野球センスだった。両チーム無得点の8回裏1死。2番手の左腕中尾に対し、2ボール1ストライクからセーフティーバントで仕掛けた。プッシュさせたゴロは投手、一塁手、二塁手の真ん中付近へ。なんとか一塁手畠山が捕球した直後、韋駄天(いだてん)は一塁ベースを駆け抜けた。

 「三塁側もちょっと考えたんですけど、一塁側に、と。1球1球守備位置も見ている。狙い通りでした」。本人も納得の内野安打から打線はつながり、4番ロサリオの一打で先制のホームインだ。1回は先頭で中前打を決めながら、けん制に引っかかる形で二盗に失敗。痛恨のミスを終盤に取り返し、金本監督からも「見事でしたね。やるタイミングもうまい」と絶賛された。

 4試合連続安打。スイッチヒッターで相手先発の左右を選ぶ必要がなく、遊撃守備もチームトップクラス。今後も1番起用が続きそうな働きっぷりだ。指揮官は「もう少し力強さというか、振る力というか。速い投手が来た時もコンパクトに振り負けない強さが出てきたら、本当に楽しみな選手ですね」とさらなる成長に期待。22歳らしからぬテクニックが虎に欠かせなくなってきた。【佐井陽介】