右腕で、よぎる悪夢を断ち切った。8回2死二塁。日本ハム石川直が、因縁の相手を迎えた。打席には西武森。鬼気迫る表情で、内角を突く。「ここで切らないと。(森よりも)そっちが気になった」。粘られ10球目。気迫を込めた直球151キロは高めに上ずったが、押し切った。左飛に打ち取り、力勝ち。直前に外崎には中越え適時二塁打を許したが、1安打1失点。リードを守りきった。

 シーズン序盤の4月18日同戦。8点リードも終盤にひっくり返され、逆転サヨナラ二塁打を浴びたのが森だった。「今日はさすがに抑えたかった」。悪夢の惨劇以来となったメットライフドームでの一戦。前日24日ロッテ戦でも「勝利の方程式」の一角として投入されながら、藤岡裕に被弾。後に延長12回サヨナラ負けにつながる痛恨の1発を浴びていた。一夜明け、絶好のリベンジの舞台で力投した。

 9回は3点リードで守護神・トンキンが登板。先頭岡田に左前打を許したが、無失点に抑えて乱打戦を制した。トンキンもまた、屈辱の一戦で打ち込まれ、前夜も2ランを浴びて悔しい思いをしていた1人。強力打線の首位西武相手に投打がかみ合い、悪夢を払拭(ふっしょく)するリベンジ勝利を果たした。栗山監督は「昨日も今日も、本当にいろんなことあったけど勝ち切れて良かった」と白星の重みをかみしめた。【田中彩友美】

 ◆4月18日西武戦の悪夢 先発の高梨が7回無失点と好投も、8点リードの8回に上原、田中豊、トンキンが打ち込まれ一挙7失点。9回には石川直が西武森にサヨナラ打を浴びた。延長に突入せず、8、9回だけで8点差以上を逆転されたのは、プロ野球史上初めてのことだった。