日本ハム西川遥輝外野手(26)が、チームを救った。楽天9回戦(楽天生命パーク)の延長12回1死三塁の場面で、決勝の中前適時打を放った。3点を追う8回には起死回生の同点5号3ランも左翼席へ運ぶなど、今季5度目の猛打賞となる3安打4打点。今季の両リーグ最長試合時間となる乱打戦に終止符を打つ大活躍で、総力戦となったリーグ戦再開初戦を白星に導いた。

 痛みをこらえると、痛快な瞬間が待っていた。延長12回1死三塁。外角への変化球を、うまくバットに乗せた西川は、すぐさま確信した。打球は中前で弾む。右手でバットを掲げながら、一塁へ走った。「何としても1点を取るぞ、という気持ちで打席に入った。打ててよかった」。直前に右足すね付近への自打球にもん絶。脂汗を右腕で拭い、再び打席に戻った初球で決めてみせた。

 劣勢の展開を一振りで覆したのも西川だった。3点を追う8回1死二、三塁。逆方向への力強い放物線は、左翼スタンドの前方、Eウイングと称される観客席へ飛び込んだ。いつもはクールなリード・オフ・マンが、一塁ベース手前で右拳を突き上げる。「ヨッシャー」と叫んで、笑みが弾けた。起死回生の同点5号3ラン。18試合ぶりの貴重な1発が、劇的な決勝打の伏線となった。

 暗中模索する中で、必死に主力の役目を果たしている。「毎日、探り探りなので」と、打撃の状態は開幕から一向に上がってきていない。中断期間の20日に札幌ドームで行われた全体練習でも、居残り特打を敢行。松本、清水とともにフリー打撃を打ち終わっても、グラウンド上で城石打撃コーチらと体重移動などを入念に確認していた。

 もがき苦しむ中で生まれた、3安打4打点の明るい兆し。「このチームは(西川)遥輝が出て、(中田)翔が打たないと勝てない」と、チームの命運を託す栗山監督も、「みんなでつないで遥輝も打ってくれた。よかった」と、今季両リーグ最長の死闘の末につかんだ勝利に安堵(あんど)。2年ぶりのリーグ制覇へ欠かせない戦力が、最高の仕事を果たした。【木下大輔】