広島が独走態勢に入った。本拠地での巨人戦は序盤から打線が活発。1回に鈴木誠也外野手(23)の適時打などで4点を奪うと、3回にも鈴木が左翼席後方の防球ネット直撃の特大11号ソロを放ち、力強く押し切った。5連勝で巨人とのゲーム差を7・5に広げ貯金は11。リーグの貯金を独占し、3連覇へひた走る。

 広島が巨人田口ものみ込んだ。主役は4番鈴木だ。1回。立ち上がり不安定な左腕から満塁から2点打の痛烈な先制パンチを放ち、1点差に詰め寄られた3回には豪快アーチを見舞った。内寄りのカットボールを強振した打球は高々と舞い上がり、左翼席後方の防球ネットを突き刺す“場外ホームラン”。「甘い球を1球で仕留められた」と、推定飛距離140メートルの1発で打線を勢いづかせた。

 負傷明けのシーズン。下半身の張りもあったが、ようやく規定打席に到達した。コンディションや打撃の調子は日によって異なり、一時は打率が2割3分4厘まで低迷。繊細な打撃感覚を取り戻す作業は、フォームの試行錯誤だけでなく、道具の変化にも表れた。打撃手袋は手のひらの感覚に近づけるため約0・45ミリまで薄くした。

 バットも開幕時は全体が黒塗りのものを使用していたが、塗装分の厚みが気になるという理由から再昇格と同時にグリップ部分の塗装がない「ポッキーカラー」に変更。繊細な感覚を少しずつすりあわせながら状態を上げてきた。それでも「まだ何が起こるか分からない」と表情を引き締めた。

 緒方監督も「すごい当たりを打つよね」と最敬礼。打率を3割1分4厘にまで上げた4番に呼応するように、広島打線も2年ぶりの5試合連続2桁安打で5連勝だ。お立ち台では「3番のビッグヘッドモンスターがしょっちゅう回してくるので」と好調の先輩丸をいじったが「本当はあの人がヒーロー」と感謝した。中軸の状態も、チームの雰囲気も最高潮。まだまだ広島打線の勢いは止まりそうにない。【前原淳】