北の鉄腕が金字塔を打ち立てた。日本ハム宮西尚生投手(33)がオリックス10回戦(札幌ドーム)で、プロ野球史上40人目の通算600試合登板と、歴代1位タイとなる273ホールドを記録した。3点リードの7回1死一塁の場面で登板。ピンチの芽を摘み取り、チームを勝利へ導いた。これで、日本ハムは貯金を今季最多タイの10に戻し、首位西武とはゲーム差なしに迫った。
記録達成がかかっても、いつもの宮西だった。通算600度目の出番は3点リードの7回1死一塁。心持ちは「いつも通りでした」。二盗を許し、得点圏に走者を背負っても動じない。伝家の宝刀スライダーを駆使して、代打伏見と武田を打ち取った。リードを保って巨人山口鉄に並ぶ通算273ホールド目に到達。「まさか自分がここまで来られると思わなかった。うれしいです」。また、仕事を果たした。
今季でプロ11年目。中継ぎ一筋。新人から10年連続で50試合以上登板を続ける。ただ、抑えたことより「失敗した時のことは鮮明に覚えている」。何度も心が折れそうになった。支えになったのは偉大な先輩左腕の存在。「(巨人)山口さんや登板数であれば(中日)岩瀬さん。先輩らが記録を作ってきてくれたから、そこを目標として心折れずに乗り越えられてきた」。素直に感謝した。
真っすぐとスライダー。宮西の主な武器は、この2つしかない。プロ入り当初、野手の先輩だった金子内野守備コーチから「今、持っている球種を磨け。他の球種は覚えるな」と言われた。同コーチは助言した意図について「楽にカウントを取れるボールを覚えると、元の球種がおろそかになる。それでダメになった先輩、後輩投手をたくさん見てきたから」と、若き左腕にスライダーを磨く重要性を説いたという。先輩の教えを守り、伝家の宝刀は今も輝き続けている。
探求心も旺盛。ピンチの場面でどう配球するのがベストか、野手に尋ねることも多い。「最近はコンちゃん(近藤)に聞いたりする。意外と投手より野手の方が僕を見ている。後輩でも、常に聞いて勉強する」。投球フォームの微修正、間合い、配球。常に考えながら、第一線を走り続ける。
栗山監督は12年に就任して以降、何度も宮西に助けられてきた。「ああいう選手を作っていかないといけないと、オレにも教えてくれた」と、頭を下げる。これでチームは西武に勝率2厘差の2位。追う日本ハムには絶対的なブルペンの大黒柱がいる。【木下大輔】
▼通算273ホールドのプロ野球タイ記録=宮西(日本ハム) 30日のオリックス10回戦(札幌ドーム)で今季16ホールド目を挙げ、山口鉄(巨人)の記録に並んだ。初ホールドは08年4月4日オリックス1回戦(京セラドーム)。宮西はこの試合でプロ野球40人目の通算600試合登板。初登板は08年3月25日西武1回戦(札幌ドーム)。初登板からオール救援で600試合登板達成は11年藤田(ソフトバンク)14年五十嵐(ソフトバンク)に次ぎ3人目。