スクランブル登板にも、阪神才木浩人投手(19)は動じなかった。先発岩貞がわずか7球で危険球退場。指示を受け、ブルペンでキャッチボールを始めた。10球ほど投げたところでマウンドへ。時間は与えられるが、プロ2年目の若武者にとってはもちろん初めての経験だ。ふ~っと深呼吸して試合再開を迎えると、スイッチが入った。

 「本当に緊急だったけど、自分はロングリリーフ。心の準備は出来ていた。1つずつしっかり投げていくという気持ちでした」

 1回無死一、二塁で試合再開。6点リードとはいえ、何が起こっても不思議ではない状況。先頭の山田哲に四球を与え無死満塁となったが、ここから本領を発揮した。バレンティンを三ゴロ、畠山を二飛、坂口を遊飛。大ピンチを1点に抑えた。2回からは140キロ台後半の直球と、鋭く落ちるフォークで押した。6回3安打7奪三振で無失点。力投でプロ2勝目を手にした。

 窮地に、周囲のサポートも万全だった。香田投手コーチからは抜け気味だったスライダーの修正ポイントの助言を受けた。ベンチでは捕手梅野と何度も会話。攻撃中のキャッチボール前には、福留から「1つずつ確実に抑えていけよ」などと何度も言葉を掛けられた。「緊急登板の時っていうのは、急にエアポケットに入ったりするから」と福留。緊急事態でチーム全体が才木を後押しした。

 金本監督も「緊急で、スクランブルをよく耐えたわね」と目を細めた。週明け3日からは9連戦。秋山を欠く状況もあり「そうね。次も先発です」と明言した。大仕事をやってのけた才木は最後「いろんなことを経験させてもらっている。これもひとつの経験として、これからの野球人生に生かしていけたら」と初々しく笑った。【池本泰尚】