フルスイングで嫌な流れを消し去った。同点の9回2死、西武木村文紀外野手(29)がプロ初のサヨナラ本塁打。楽天宋家豪の150キロ直球をバックスクリーンまで運んだ。手荒い歓迎を受け「手が震えてます。今日は意地でも勝ちたかった。大量の水を掛けられるは、ボコボコに殴られるは、もう最高ですね」。興奮しながら振り返った。

 流れは最悪だった。リリーフの3投手が全員失点。9回には左翼斉藤彰が飛球の目測を誤り、落球でピンチが拡大。抑えのカスティーヨが押し出し四球で、最大4点差を追いつかれた。「斉藤(彰)もすごく責任を感じていたと思う。(次打者斉藤彰に)チャンスで回せればベストかなと思っていたけど。ベンチでずっとすいませんと言っていたから」。出塁を狙っていたが、想定以上に飛距離が出ていた。

 木村と斉藤彰には縁がある。05年高校野球の埼玉大会決勝。木村は埼玉栄の2年生エースとして春日部共栄の1年生斉藤彰から4三振を奪った。だが、チームは9回2死から逆転され甲子園を逃した。今は外野の定位置を争うが食事に行く仲。「ライバルだけどあいつがスタメンなら結果を出してもらいたい」と力を合わせ地元西武の勝利を目指す。

 ライオンズクラシックとして、前回優勝した08年のユニホームを着用した。日本ハムとはゲーム差0で、負ければ今季初の首位陥落もありえる状況だった。4回には当時主軸の栗山、中村の連打で逆転し、満員の観客を喜ばせていた。最高の形から暗転し、負ければ分岐点となりそうな試合でサヨナラ勝ち。辻監督は「チームを救ってくれた。嫌な雰囲気だったから」と木村に感謝した。【斎藤直樹】